看護師として転職先の初日に「辞めたい」と思ってしまうのは、決して珍しいことではありません。新しい職場では仕事内容や人間関係などに不安を感じる場合も多く、初日だけでは戸惑うこともあるでしょう。しかし、転職してすぐに退職を決断する前に、なぜそのように感じたのか理由を整理し、自分に合った対策を考えることが大切です。
本記事では、看護師が転職初日に辞めたいと感じる主な理由や、その対処法、退職手続きのポイントなどを解説します。
目次
看護師転職の初日、辞めたいと思ったら知っておきたいこと
転職初日に辞めたいと感じる気持ちは、多くの看護師にとって決して珍しいものではありません。新しい職場では勤務体系や医療体制、人間関係などがガラリと変わるため、最初は大きな不安や戸惑いを覚えるでしょう。
しかし、初日だけで全てを判断するのは早計です。まずは一晩休んで冷静になった上で、状況を整理してみましょう。どんな点が合わなかったのか、自分の不満は何から来ているのかを明確にすることで、冷静な判断がしやすくなります。
看護師はチーム医療を担う立場ですから、新しい職場の環境に適応するのにある程度時間がかかるのは当然のことです。周囲とコミュニケーションをとりながら、少しずつ仕事に慣れていく時間を確保してみてください。
誰にでもある初日の不安
看護師は専門性の高い仕事のため、新しい環境に慣れるまでは誰でも緊張します。実際の業務を指導する時間は初日以降にも設けられていることが多く、初日に全てを完璧にこなせる必要はありません。
忘れ物や手順の確認ミスなどがあっても、自分だけではないと考えましょう。まずは業務説明をしっかり受け、わからないことは素直に質問してペースをつかむことが大切です。
期待と現実のギャップ
求人票や面接で聞いていた働き方と、実際の職場環境が大きく異なると、辞めたい気持ちが強くなることがあります。
たとえば、「残業はほぼない」と聞いていたのに繁忙期には毎日残業が発生したり、希望の働き方を了解してもらえたと思ったのに実際はその通りにならなかったりするケースです。
このようなギャップは誰でもショックを受けるもの。その場で決めつけず、事実と自分の希望条件を整理してみましょう。
まずは冷静に状況を整理しよう
初日に感じた戸惑いは、勢いだけでは正しく判断できないことがあります。一度立ち止まって冷静になり、具体的に何に不安を感じたのか整理してみてください。
「仕事が難しくてついていけないのか」「仕事量が想像以上に多かったのか」「職場の雰囲気がなじめないのか」など、原因が明確になれば対策も見えてきます。焦ってすぐ決断せず、翌日以降も様子を見ながら少しずつ適応していく余地を自分に与えましょう。
看護師が転職初日に感じる「辞めたい」主な理由
転職先の初日に「辞めたい」と感じる背景には、期待とのギャップや新しい環境への不安など、いくつかの要因があります。ここでは代表的な理由を見ていきましょう。
求人票情報と職場のギャップ
事前に見ていた求人情報と実際の職場が違うと、驚きや不信感が大きくなります。
例えば、「夜勤は月に1回のみ」と聞いて入職したのに、実際には月5回以上の夜勤が組まれるケースがあります。また、休暇や福利厚生について聞いていた条件と違った場合も「話が違う」と感じる原因になります。
給与水準やシフト、有給取得のしやすさなども含めて、転職前の情報と実態にズレがないか確認してみることが大切です。
感染予防対策への不安
病院やクリニックでの感染対策に対する不安は、看護師にとって深刻な問題です。
例えば医療用マスクやガウン、手袋などの個人防護具が不足していたり、感染管理の手順に従えていない職場では、「自分や患者さんが危険にさらされるのでは」と感じることがあります。
とくにコロナ禍以降、感染対策への意識は高まっているため、予防策に不安がある職場では即戦力として働くことに不安を覚えやすいと言えるでしょう。
人間関係への不安
看護はチームワークが重要な仕事です。そのため、転職先で上司や同僚との相性が合わないと、「このままやっていけるのか」と不安を感じることがあります。
ただし、初日で人間性を判断するのは難しく、最初は少し緊張したコミュニケーションになるのは普通です。真正面からぶつかったり孤立感が強い場合を除き、最初の印象で判断せず、少なくとも数日は様子を見てみることも考えましょう。
医療・看護の質のギャップ
転職前に想像していた医療レベルと実際の現場の質が大きく違うと、やる気を失ってしまうことがあります。
例えば、高度医療を学ぶつもりで大病院に転職したのに、最新の医療機器がなく診療内容が古いクオリティにとどまっていた場合、スキルアップの機会が少ないと感じることがあります。逆に、ゆったりと研修が受けられる病院だと思っていたのに、実際は急患対応が多忙で思うように学べない…といったミスマッチも早期退職の理由となります。
教育体制のミスマッチ
新人看護師への教育体制が整っていないと、孤立感や不安が強まりやすいです。
例えば「質問しても教えてくれない」「予定していた研修が実施されない」などの場合、新人は業務を独学でこなさなければならなくなります。
十分なサポートがないまま現場に放り出されると、ミスの不安や労働負担の重さから「このままでは危険を伴う」と感じて転職を考え始めるケースがあります。
初日に辞めたいと思ったときの対処方法
辞めたい気持ちが湧いても、まずはいったん冷静になりましょう。一人で考え込まず、具体的にどう行動するかをイメージしてください。以下では、辞めたいと感じたときに取るべき対処法を紹介します。
まずは気持ちを整理する
初日の疲れや緊張から焦ることがありますが、まずは気持ちを書き出して整理しましょう。
「どのような場面がつらかったのか」「具体的に何が不安なのか」を明らかにすることで、自分に必要なサポートや改善点が見えてきます。事実と感情を切り分けて考えることで、感情的な判断を避けられるようになります。
上司や先輩に相談する
不安な気持ちは抱え込まず、周囲に相談しましょう。
転職初日は周囲もあなたの状況を把握できていない場合が多いので、上司や教育担当に自分の戸惑いや疑問を伝えることで、必要な指導やフォローを受けられる可能性があります。
看護職場では情報共有が重要ですから、一人で抱え込まず仲間のサポートを活用することを心がけてください。
セルフケアとストレス管理
慣れない勤務環境ではストレスがたまりやすいので、オフの時間にしっかり休息を取ることも大切です。
適度にリラックス法を取り入れたり、趣味や運動で気分転換を図ることで、心身のバランスを保てます。
十分にリセットした状態で翌日の仕事に臨むと、冷静な気持ちで仕事に取り組めるようになるでしょう。
必要に応じて専門サポートも活用する
どうしても不安が強い場合は、専門的な支援を検討しましょう。
最近では看護師向けのオンライン相談窓口やメンタルヘルス相談が充実するなど、支援策が増えています。必要に応じてこうしたサービスを利用してみてください。
また、同僚や看護師仲間に吐き出すだけでも気持ちが楽になることがあります。
【メンタルケア】転職初日に強い不安やストレスを感じたら、無理をせず休息することも大切です。
近年はオンライン相談窓口やメンタルヘルスチェックなどの制度が充実しており、一人で抱え込まず活用することで心身の健康を守りましょう。
【注意】パワハラ・セクハラや法令違反など、明らかに劣悪な労働環境がある場合は、自身の安全と健康を優先し早めに退職を検討しても構いません。
ただし、その際も上司や人事に相談の上、可能な限り円満な手続きを心がけましょう。
退職前に確認したいルールと手続き
本採用後すぐの退職を考える場合も、まずは手続き面を確認しましょう。雇用契約や就業規則で定められたルールに従い、計画的に進めることがトラブル防止につながります。以下のポイントを押さえましょう。
就業規則と試用期間
ほとんどの職場では就業規則で退職時期のルールが定められています。
法律上は「期間の定めがない契約の場合、2週間前の申し出で退職可能」とされていますが、多くの医療機関では「1ヶ月以上前通知」が一般的です。
また、新人看護師には試用期間(多くは3~6ヶ月)が設けられることがあります。試用期間中の退職であれば比較的スムーズに退職できるケースもありますので、まずは就業規則や雇用契約書の内容を確認しましょう。
退職の申し出タイミング
退職を決意したら、できるだけ早めに申し出るのがマナーです。
まずは直属の上司に直接相談し、退職を考えている理由を簡潔に伝えましょう。その後、就業規則に従って書面で退職願を提出します。
病院や施設によっては人事部や院長への申請が必要になる場合もあるので、誰に届け出るべきか確認しておくと安心です。
上司への退職意思の伝え方
上司には誠意を持って退職の意向を伝えましょう。
退職理由はできるだけ前向きな表現にまとめ、「自身の目標や適性を考えた結果」という形にすると印象が良くなります。
退職の申し出時には感謝の言葉を忘れず、後任者への引き継ぎや職場への配慮を申し出ておくと、円満退職につながります。
退職後の引継ぎとマナー
退職を決めたら、最後まで責任を持って業務に取り組みましょう。
具体的には、自分の担当している仕事の内容や手順をまとめておき、後任者がスムーズに引き継げるようにします。必要な書類や患者情報の整理も忘れずに行いましょう。
最終出勤日には同僚にきちんと挨拶し、これまでの感謝を伝えて退職することで、職場との良好な関係を保ったまま次のステップに進めます。
初日退職がキャリアに与える影響
転職先を初日に辞めてしまった場合、次の転職活動への影響が気になる方もいるでしょう。
確かに転職回数が多いと面接で質問されやすいですが、看護師不足が続く現状では即断する必要はありません。ただし、再就職時に備えて説明の準備はしておきましょう。以下では、影響とその対策を解説します。
短期離職の履歴書への影響
履歴書や職務経歴書に短期間の離職歴があると、「継続性に不安がある」と捉えられる可能性はあります。
しかし、看護業界では新卒や中途で職を変える人も少なくありません。そのため、短期離職が必ずしも致命的というわけではありません。大事なのは、経歴を正直に記載し、転職理由をしっかり説明できるようにしておくことです。
転職面接での説明のポイント
面接では、なぜ初日で辞めたのかを問われることがあります。答える際は、ネガティブになりすぎないよう注意しましょう。
例えば「職場の医療体制が自分の目標と合わなかった」と淡々と説明し、自分が今後どのような現場で働きたいのかを明確に伝えると良いでしょう。
大事なのは前向きな姿勢です。今回の経験を通じて何を学び、次にどう生かすかを語れれば、採用担当者にも好印象を与えられます。
今後の職場選びの注意点
今回の経験を活かし、次回は職場選びを慎重に行いましょう。
求人情報だけでなく、面接の際に勤務スタイルや教育体制について具体的に質問し、自分に合う職場か見極めてください。また、転職エージェントや看護師の口コミサイトなど第三者の意見を参考にするのも有効です。
失敗から学んで適性に合う職場を探し直すことが、長く安定して働くためのカギになります。
【注意】転職初日に辞めた経験は、履歴書や面接で説明が必要になります。
辞めた理由は前向きに言い換え、学んだことを次につなげられるよう準備しておきましょう。
まとめ
看護師が転職先の初日に「辞めたい」と思うのは、新しい環境への期待と現実のギャップや人間関係の不安などが主な原因です。しかし、初日の印象だけで決めず、まずは落ち着いて状況を整理し、周囲にも相談してみることが重要です。上司や先輩のサポートを受けながら業務に慣れていけば、初期のストレスが軽減する可能性も高いです。
それでもなお職場環境に問題がある場合は、安全を最優先に退職を検討しても良いでしょう。その際は就業規則を確認し、できるだけ円満な形で区切りをつけることが望まれます。
いずれの場合も、今回の経験を次につなげることが大切です。今回学んだことを生かし、自分に合った職場で充実した看護キャリアを築いていきましょう。