病院薬剤師の年収は本当に低いのでしょうか?医療現場で不可欠な存在であるにもかかわらず、他の薬剤師より給与面で不利だと感じる人も多いのではないでしょうか。2025年の最新データを元に、病院薬剤師の年収事情を多角的に検証します。年収が低いと言われる背景や平均水準、給与アップの具体策まで丁寧に解説します。
この記事を読めば、病院薬剤師の給料に関する疑問を解消し、キャリア設計の参考になる情報が得られます。最新の情報を正確に把握することで、今後の働き方に役立つヒントをお届けします。
目次
病院薬剤師の年収が低い理由
病院薬剤師の年収が他職種に比べて低いのは、病院特有の事情が大きく影響しています。以下の要因を中心に、主な理由を解説します。
医薬分業と院内薬局の収益減少
近年の医療制度改革で院外処方が増加し、院内薬局が扱う処方箋の数が減少しています。
院内薬局の売上減少は病院全体の収益にも影響し、人件費を削りやすい要因になっています。病院は利益追求よりも地域医療の維持を重視しており、給与水準は安定志向になる傾向があります。
新卒人気がもたらす給与の安定
病院薬剤師の業務は専門性が高くやりがいがある反面、医療現場で働けることから新卒にも人気があります。
新卒の薬剤師は病院就職を希望する人が多く、病院側は高い給料を出さなくても安定して人材を確保できます。そのため、給与を大幅に引き上げる圧力は他職種に比べて低い状況です。
他職種との初任給・手当の違い
病院薬剤師は入職時の月給が比較的低めの設定になっています。
例えば、調剤薬局やドラッグストアの薬剤師は初任給が月額26~30万円ほどあるのに対し、病院薬剤師は20~25万円程度が一般的です。また、夜勤手当や資格手当の水準にも差があり、結果として他業種に比べ年収に差が生じやすくなっています。
病院薬剤師の年収実態と推移

2025年の調査によると、薬剤師全体の平均年収は約599.3万円だった一方、病院薬剤師は約521.7万円と低い水準にとどまっています。
以下の表は職種・施設別の平均年収の例です。
| 区分 | 平均年収 |
|---|---|
| 薬剤師全体 | 約599.3万円 |
| 病院薬剤師(平均) | 約521.7万円 |
| 一般病院薬剤師 | 約568.9万円 |
| 国立病院薬剤師 | 約626.5万円 |
このように、病院薬剤師の平均年収は一般の薬剤師よりも低く、国立病院ではやや高めですが、医療法人を含む多くの病院では平均520万円前後となっています。
経験年数別の年収推移
年齢や経験年数に応じて年収は上昇します。
一般的には、新卒(1年目)は年収300~350万円程度、5年目で約600万円、10年目で約700万円に達します。以下の例で、経験年数ごとの目安を示します。
- 1年目:300~350万円程度
- 5年目:600万円前後
- 10年目:700万円前後
- 15年目以上:750万円以上
経験を積むことで昇給が見込まれ、管理職や認定資格を取得することで年収に上乗せが期待できます。
病院薬剤師と他職種薬剤師の年収比較

病院薬剤師の年収は、他の薬剤師職種と比べてどうなのかも気になるところです。ここでは調剤薬局・ドラッグストア、製薬企業、そして国公立病院・民間病院間の違いを比較します。
調剤薬局・ドラッグストアとの年収差
大手チェーンの調剤薬局やドラッグストアでは薬剤師の年収が比較的高い傾向があります。
例えば、大手ドラッグストアの薬剤師平均年収は500~600万円前後に上る場合が多いです。一方、病院薬剤師の年収は一般的に500万円前後とされ、これらと比べると低めです。
製薬会社・企業薬剤師との比較
製薬企業やCROなど企業で働く薬剤師の年収は、病院勤務の薬剤師よりも高い傾向があります。
大手製薬会社では薬剤師の平均年収が700万円以上という例も少なくありません。このように、高収益を背景にした企業では年収水準が高くなるため、病院との差が大きくなっています。
国公立病院と民間病院の違い
病院の中でも国公立病院と医療法人(民間病院)では給与体系が大きく異なります。
国公立病院の薬剤師は公務員に準じた待遇で昇給が着実に行われ、手当も充実しているため、平均年収は600万円以上になる例が多いです。一方、医療法人を含む民間病院では給与は病院ごとにばらつきが大きく、平均は520万円前後とされています。
病院薬剤師が年収を上げる方法
病院薬剤師が年収を向上させる具体策をいくつか紹介します。専門資格の取得や昇格、転職などで給与アップを狙うことができます。
専門認定資格取得による手当増
病院薬剤師は専門・認定薬剤師資格を取得することで、資格手当を得ることができます。
例えば、がん専門薬剤師や感染制御認定薬剤師の資格を持っていると、月5万円前後の手当が支給される病院もあります。これにより年収に換算すると数十万円の増加が見込め、確実な年収アップに繋がります。
管理職・役職での昇給
管理薬剤師や薬剤部長に就くと、一般薬剤師より大きな給与アップが見込めます。
厚生労働省の調査によると、管理薬剤師の平均年収は720万円前後で、一般薬剤師と比べ約200万円高い水準です。役職につくことで基本給や賞与が増えやすく、着実に年収を上げる手段となります。
転職や職場選択による年収アップ
転職も年収アップの一つの手段です。
求人状況によっては病院から調剤薬局や製薬企業へ転職することで、200万円以上年収が上がる例もあります。特に、国公立病院など昇給が安定した職場を選ぶことで、長期的に高い年収を得やすくなります。
まとめ

病院薬剤師の年収は他の薬剤師職種に比べて低めですが、その背景には医薬分業や病院組織の人事構造など複合的な事情があります。
国公立病院では年収が高めに設定されている一方、医療法人を含む多くの病院では500~520万円前後が目安とされます。経験年数を重ねるほど昇給が見込まれるため、専門資格取得や管理職昇格、転職などを活用して収入アップを目指すことが可能です。
病院薬剤師として安定した収入を得るには、制度や職場環境を理解し、キャリア戦略を立てることが大切です。本記事の情報を参考にしつつ、将来設計に役立ててください。