看護師として働く皆さんにとって、給料アップは永遠のテーマです。経験を積むだけでなく、専門性を証明するために資格取得を目指す方も多いでしょう。しかし、実際に「どの資格が給料アップにつながるのか」「どれほど収入が増えるのか」は意外とわかりにくいもの。
この記事では、看護師が給料アップを狙える資格とその活用ポイントを詳しく解説します。キャリアアップを目指すヒントとしてぜひお役立てください。
看護師が給料アップできる資格とは?
まずは「資格取得=給料アップ」というイメージがどのような仕組みで成立するかを理解しておきましょう。多くの病院では、専門的な資格を取得した看護師に対して毎月の資格手当を支給する制度があります。この資格手当は、給与に直接プラスされるため、年収ベースで見ると年間約10万円以上の差になることもあります。一例として、専門看護師の資格手当は月額1万2千円前後、認定看護師では月額1万円弱というデータも報告されています。
こうした手当がある職場なら、専門資格の取得で実質的な給料アップ効果を期待できます。一方、資格取得そのものが昇給や昇進に直結しないケースもあるため、資格はあくまで評価材料の一つと捉えるのが現実的です。最新のデータでは看護師の平均年収が約508万円(月給約35万円)とされる中、資格手当で数十万円を追加できれば少なからぬインパクトがあります。
では、実際にどのような資格が「給料アップにつながる資格」なのでしょうか。以下では代表的な資格の特徴とメリットを見ていきます。
資格手当で給料アップできる仕組み
看護師の給与体系は基本給+各種手当で構成されており、資格手当はその中の重要な一つです。特に日本看護協会認定の「専門看護師」「認定看護師」など看護業務に直結する資格を取ると、多くの病院で資格手当が付けられます。また、助産師や保健師のような国家資格では、そもそもの給与テーブルが一般の看護師と別に設定されている場合もあります。
たとえば、助産師は出産介助に対する特別手当などが付きやすく、国家公務員や地方公務員の保健師は基本給が高めに設定される傾向があります。そのため資格を取得するだけでなく、資格取得後にそれを評価する職場へ移ることも給与アップのカギとなります。
給料アップにつながる代表的な資格
具体的に、看護師の給料アップに効果的といわれる資格をいくつか挙げます。まず、日本看護協会認定資格では「専門看護師(CNS)」と「認定看護師(CN)」が有名です。専門看護師は修士課程修了が要件で、認定看護師は実務経験5年以上と教育課程修了が必要です。取得後は両者とも資格手当が支給されることが多く、キャリアの幅が広がります。
また「助産師」「保健師」の国家資格も看護師と並行して取得可能なため、これらを追加取得すると待遇が大きく変わります。助産師は出産介助手当で、保健師は行政職としての基本給で優遇されるケースがあります。さらに最近は高度実践看護師である「診療看護師(NP)」も注目され、人手不足の分野では高待遇で迎えられる傾向です。
資格取得のメリット・デメリット

資格を取得することにはメリットとデメリットが存在します。まずメリットとして、専門分野の知識・技術を身につけること自体が評価され、資格手当による給与上乗せや転職市場でのアピール材料になります。先述のように資格手当は月1万円程度が相場とされ、年で10万円以上の年収アップが見込めるため、収入面では大きな魅力です。さらに、資格取得中に得た知識が日々の業務に役立ち、職場での存在感が高まることもメリットです。
一方デメリットも忘れてはいけません。専門看護師資格の取得には大学院修士課程2年、認定看護師には600時間以上の教育課程が必要で、平日の勤務と両立させるのは難しいでしょう。取得には学費や研修費用もかかるため、金銭的・時間的負担も大きい点がデメリットです。さらに、近年の調査では「取得した資格を昇給や昇進査定の対象外としている病院」が多いという報告もあります。このため資格だけを取っても給与アップが約束されるわけではなく、キャリア計画の一環として考える必要があります。
資格取得で得られる収入アップのメリット
資格取得の最大のメリットは「資格手当」です。実に国内の約6割の病院が専門資格保持者に対して手当を支給しています。資格手当は月1~2万円になるケースもあり、年間で数十万円の増加につながります。また、看護師市場での希少価値が高まることで転職時の給与条件が良くなることも期待できます。実際、専門性の高い資格を持つ看護師は待遇が良い病院に迎えられやすく、長期的な年収アップにつながります。
さらに、資格取得に向けた学習で得る知識やスキルは日常業務にも還元され、患者ケアの質向上や勤務評価に良い影響を与えます。指導的立場や教育への道に進みやすくなるため、結果的に役職手当などで収入が増えるケースもあります。
資格取得のデメリット
一方で資格取得には「時間と費用」の負担があります。例えば専門看護師は大学院修士課程を修了する必要があり、学費や試験対策の時間を確保しなければなりません。認定看護師でも600時間以上の研修が必要となり、勤務を続けながら通うのは大変です。また、資格取得にかかる費用も軽視できません。これらをクリアしても、前述のように給与テーブルに資格が反映されない場合には、実質的な昇給効果が薄い恐れもあります。資格取得は、将来のキャリアアップを見据えた投資と割り切ることが重要です。
日本看護協会認定の資格で差をつける

日本看護協会が認定する専門資格には「専門看護師」「認定看護師」「認定看護管理者」があります。これらは看護実践の専門性や管理能力を高める資格で、取得後には資格手当や昇進チャンスが増える可能性があります。
専門看護師(CNS)
専門看護師は、がん看護や救急看護など特定分野で高度なケアができる能力を持つ証です。取得には看護系大学院の修士課程修了や長年の実務経験が必要で難易度は高めです。取得後は病院全体の教育やコンサルに関わる機会が増え、資格手当が支給される施設も多いです。専門看護師の資格は希少性が高く、転職市場での価値も大きいため、待遇面で差別化しやすいメリットがあります。
認定看護師(CN)
認定看護師は、緩和ケアや感染管理など21分野の認定看護分野を担当できる資格です。看護師歴5年以上(うち該当分野3年以上)の実務経験と所定の教育課程修了が条件。取得後は多くの医療機関で資格手当がつき、専門性を生かした役割で責任ある業務につけるようになります。現場では教育指導や相談役として重宝されるため、昇給要素として評価してくれる職場もあります。
認定看護管理者
認定看護管理者は病棟の管理業務や看護の組織運営に秀でた看護師に与えられる資格です。取得には看護師長クラスの管理経験と、日本看護協会が定める認定教育の修了(または大学院修了)が必要です。この資格を持つ看護師はマネジメント能力が認められており、管理職手当や組織内での優遇につながる場合があります。看護部長など上級管理職を目指す場合、加点要素として働くことが多い資格といえるでしょう。
医療系国家資格でキャリアアップ
看護師資格に加えて取得できる医療系の国家資格も、待遇アップに役立ちます。以下の資格は、看護師のキャリアパスを広げつつ収入面でもメリットがあります。
助産師
助産師は出産に関わる看護専門職で、看護師国家試験合格後に助産師養成課程を修了し再受験する必要があります。助産師は分娩介助や妊産婦ケアの専門家として働くため、病院では「分娩手当」や「助産手当」が支給されることが多く、看護師よりも初任給・年収が高い場合があります。特に産科勤務や助産院での勤務では基本給に加えて夜勤や分娩対応手当が上乗せされるため、総合的な収入がアップしやすい資格です。
保健師
保健師は地域の健康相談や学校・企業の保健室で働く専門職です。看護師免許取得後、保健師養成課程や大学院で学ぶことで保健師の国家試験を受験できます。公務員保健師の場合、地方公務員としての給料体系になるため看護師よりも基本給が高めに設定されるケースがあります。企業の産業保健師も健康管理手当などで優遇されることがあり、子育て支援や福利厚生の充実した職場が多いのも特長です。
診療看護師(NP)
診療看護師(Nurse Practitioner)は、高度な医療行為ができる先進的な資格で、看護系修士課程修了者が受験できます。NPは患者への診察補助や一部医療行為が可能となるため、一般の看護師より高待遇で採用されることが多いです。日本では医療行為に関する法整備が急速に進んでおり、NPには年収700万円以上を支給する病院もあります。海外のNPと同様、日本でも今後需要増が見込まれており、いち早く取得しておくことで高収入を狙えます。
介護支援専門員(ケアマネージャー)
介護支援専門員(ケアマネージャー)は、介護保険制度におけるケアプラン作成などを担う国家資格です。看護師がケアマネ資格を取得すると、介護施設や地域包括支援センターでの役職ポストに就きやすくなります。ケアマネは管理職的な立場になることが多く、給与水準も看護師職と比べて高めです。また施設によっては「ケアマネ手当」を支給している場合もあり、介護分野でのキャリアアップを視野に入れるなら有用な資格です。
看護師のキャリアに役立つ民間資格

看護師業務に関連する民間資格も、専門知識を証明することでキャリアアップに役立ちます。直接的な資格手当は少なくとも、希少分野の資格を持つことで転職市場での需要が高まり、結果的に収入アップにつながることがあります。代表的なジャンルごとにいくつか例を見ていきましょう。
循環ケアの資格
循環器分野で評価される資格には以下のようなものがあります:
- 循環器専門ナース: 心臓手術やカテーテル検査を支援する専門スキルを証明する資格。
- 心臓リハビリテーション指導士: 心疾患患者のリハビリや生活指導を行う知識・技術を認定。
- 体外循環技術認定士: 心臓手術で人工心肺装置を操作する技術を持つことを認める資格。
これらの資格は、循環器科や心臓外科で重宝されます。循環器病棟やICUなどで働けば手術・夜勤手当で収入が増えるため、資格を評価する職場ならば給与面でのメリットが出やすいでしょう。
呼吸器ケアの資格
呼吸器ケア系の資格例:
- 3学会合同呼吸療法士: 人工呼吸器の管理や呼吸リハビリを専門とする国家資格(臨床工学技士資格)です。エキスパートとしてICUや在宅医療で重宝されます。
- 呼吸器関連の民間資格: 呼吸ケアに特化した認定資格(例:呼吸ケア指導管理士)などもあり、呼吸器内科や呼吸リハ科での専門性を示す手段になります。
これらの資格単体では資格手当がなくても、取得者は呼吸器疾患治療に精通しているとみなされ、求人数の多い呼吸器病棟やICUでの採用時に優遇されることがあります。その結果、夜勤や専門外来手当などで給料アップを期待できます。
不妊治療の資格
不妊治療分野の資格:
- 不妊カウンセラー: 不妊治療中の夫婦への相談業務などを行う資格です。クリニックで資格手当が出る場合もあり、患者対応スキルが高いと評価されます。
- 体外受精コーディネーター: 高度生殖医療(体外受精・顕微授精)をサポートする専門資格。取得者は少なく希少価値が高いため、不妊治療クリニックでの需要が上がっています。
高齢化社会の影響で不妊治療の需要は拡大傾向にあります。これらの資格はまだ取得者が少ないため、取得していると希少性が認められ待遇交渉や転職時の評価で有利に働く可能性があります。
公認心理師・臨床心理士
心理系の資格では、看護師資格と両立しやすい「公認心理師」や「臨床心理士」もあります。精神科や総合病院で患者のカウンセリング業務に携わる場合など、公認心理師手当が出る病院も増えています。資格取得には心理学系大学院修了が必要で難易度は高いですが、精神保健相談室や福祉施設、教育現場など活躍のフィールドが多い点がメリットです。これらを持っていれば、精神科看護やリエゾンナースなど専門職への道を開き、結果的にキャリアアップにつながります。
介護・福祉関連の資格
看護師資格者が取得可能な介護・福祉関連の民間資格例:
- 認知症ケア専門士: 認知症ケアの知識と技術を認定する資格。病院の認知症病棟や介護施設で重用され、資格手当を支給する施設もあります。
- 認知症ケア指導管理士: 認知症治療病棟での実務能力を示す資格。主任的な役割を担いながら介護計画を作成する知識が評価されます。
これらの資格を持つと、特に老年看護や介護現場で一目置かれます。資格手当がある場合は数千円ですが、認定された専門知識に基づいて働けることで、結果的に転職時の提示条件が良くなり、給料面でも恩恵を受けやすくなります。
まとめ
看護師が給料アップを目指すには、資格取得は一つの有効な手段です。専門看護師・認定看護師・助産師・保健師などの公的資格は、資格手当や基本給アップにつながりやすいメリットがあります。
一方で、資格取得には多大な時間と費用がかかること、昇給保証ではない点への理解も必要です。資格を活かすには、取得後にそれを評価してくれる職場環境選びや転職サイトの活用も大切です。必要な資格・スキルだけでなく、夜勤の増減や役職手当など給与アップに直結する要素を総合的に考え、キャリア戦略を立てましょう。
最終的には、看護師としての専門性向上を目指しつつより良い条件の職場を選ぶことが、安定した収入アップにつながります。