看護師として働き続けたいけれど、パートか常勤か、どちらを選ぶべきか迷っている方は多いです。
ワークライフバランスを優先するのか、収入やキャリアを優先するのかによって、最適な働き方は変わります。
本記事では、看護師のパートと常勤それぞれのメリット・デメリットを、最新の働き方の傾向や制度も踏まえて整理し、具体的に比較します。
途中で後悔しないための判断ポイントや、ライフステージ別の選び方も解説しますので、自分に合う働き方を見極める参考にしてください。
目次
看護師 パートか 常勤か メリット デメリットを総合的に理解しよう
看護師がパートか常勤かを選ぶとき、真っ先に気になるのは「結局どちらが自分に合っているのか」という点です。
しかし、単純に楽そう・きつそうといった印象だけで決めてしまうと、あとから「思っていた働き方と違った」と後悔することになりかねません。
そのため、まずは両者のメリット・デメリットを体系的に整理し、全体像をつかむことが重要です。
近年は、医療機関側も多様な働き方のニーズに対応しようとしており、パートでも責任ある業務を担うケースや、常勤でも残業が少ない職場など、従来のイメージが通用しない場面も増えています。
この記事では、収入、働きやすさ、キャリア、家庭との両立など、複数の観点から違いを整理し、最終的に自分の価値観に合う選択ができるよう解説していきます。
パートと常勤の基本的な違い
パートと常勤の最大の違いは、雇用形態と労働時間にあります。
常勤は原則フルタイムで週40時間前後勤務し、病院や施設の中核としてシフトを支える役割を担います。
一方、パートは週あたりの勤務時間が短く、勤務日数や時間帯をある程度自分の都合に合わせて調整しやすいのが特徴です。
また、夜勤の有無も両者を分けるポイントで、常勤では夜勤を含む交代制勤務が求められる一方で、パートでは日勤のみや短時間勤務が選択されることが多いです。
さらに、雇用契約上も違いがあります。
常勤は無期雇用が前提で、賞与や昇給制度、退職金などが用意されているケースが多いのに対し、パートは有期契約や時給制が中心で、賞与や退職金は職場によって有無が分かれます。
ただし、法改正の影響で、一定条件を満たすパートには社会保険加入や処遇改善が進んでおり、以前より待遇差は縮まってきている点も押さえておきたいところです。
メリット・デメリットを整理する重要性
パートと常勤のどちらを選ぶにしても、一番大切なのは自分にとっての優先順位を明確にすることです。
収入を最大化したいのか、家庭や育児との両立を優先したいのか、キャリアアップを目指したいのかによって、メリット・デメリットの受け止め方は変わります。
メリットだけを見て決めるのではなく、その裏にあるデメリットも冷静に理解しておくことが、後悔を防ぐ近道です。
また、同じパート・同じ常勤でも、病院かクリニックか、急性期か慢性期か、訪問看護か施設かなど、勤務先の特性によって働き方は大きく異なります。
そのため、「パートはこう」「常勤はこう」と一括りに考えるのではなく、一般的な傾向を押さえたうえで、自分が候補にしている職場や地域の実情もあわせて確認する視点が求められます。
自分に合う働き方を選ぶための視点
自分に合う働き方を選ぶためには、短期的な条件だけでなく、中長期的なライフプランも含めて考える必要があります。
例えば、「今は子育てで時間が限られるからパートを選ぶが、子どもが成長したら常勤に戻したい」といった将来像を描いておくと、ブランクを作りすぎない勤務先の選び方や、スキル維持の工夫が見えてきます。
逆に、長くゆるやかに働くことを優先したい場合は、パートを軸にしたキャリア構築もあり得ます。
判断の際には、次のような観点で自分の希望を書き出してみると整理しやすくなります。
- 月々どの程度の収入が必要か
- 夜勤の可否、残業許容時間
- 休日数や曜日の希望
- キャリアアップや資格取得への意欲
- 家庭・育児・介護などの事情
これらを明確にしたうえで、パートと常勤それぞれの特徴を照らし合わせていくと、自分にとっての最適解が見えやすくなります。
看護師が常勤で働くメリット

常勤看護師として働く最大のメリットは、安定した収入と雇用、そしてキャリア形成のしやすさです。
多くの医療機関では、基本給に加えて各種手当や賞与が支給されるため、年間を通じた収入の見通しが立てやすくなります。
また、組織の中核として勤務することで、役職や専門分野へのステップアップの機会も得やすくなります。
さらに、社会保険や退職金制度、充実した研修など、福利厚生面でも常勤に厚く設計されている職場が多く、長期的な生活基盤を築きたい人にとっては大きな魅力です。
ここでは、常勤という働き方がもたらす代表的なメリットを具体的に見ていきます。
収入と賞与が安定しやすい
常勤看護師は、基本的に月給制であり、毎月ほぼ一定の給与が支給されます。
夜勤手当や時間外手当が加わることで、さらに収入が上乗せされるケースも多く、年間収入ベースで見るとパートより高くなりやすい傾向があります。
また、多くの医療機関では年2回程度の賞与があり、勤務年数や評価に応じて増減する仕組みが一般的です。
収入が安定していると、住宅ローンや教育費など長期的な支出計画が立てやすくなります。
特に世帯の主たる収入源となる場合には、一定以上の収入と賞与が見込める常勤という働き方は大きな安心材料となります。
生活基盤をしっかり固めたい人や、家計を支える立場の人にとって、常勤の収入面でのメリットは非常に大きいといえます。
福利厚生・社会保険の充実
常勤では、健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険といった社会保険への加入が原則となり、将来の年金や病気・失業時の保障が手厚くなります。
加えて、医療機関によっては、企業年金や退職金制度、医療費補助、職員寮、保育施設、資格取得支援制度などが整備されている場合もあります。
これらの福利厚生は、単に「お得」なだけでなく、長く安心して働き続けるための重要な土台となります。
特に退職金や厚生年金は、将来の生活資金にも直結するため、長期目線で考えたときのメリットは非常に大きいです。
パートでも条件を満たせば社会保険に加入できるケースは増えていますが、トータルの保障や制度の利用しやすさは、依然として常勤が優位であることが多いです。
キャリアアップ・スキル維持に有利
常勤として勤務していると、部署異動や専門チームへの配属、リーダー業務など、幅広い経験を積む機会が得られます。
急性期病棟や集中治療室、外来、在宅など、異なるフィールドを経験することで、看護師としての視野とスキルが大きく広がります。
また、職位としても、リーダー、主任、副師長、師長などの役職に就くチャンスは主に常勤に与えられることが一般的です。
さらに、研修や学会参加、認定看護師・専門看護師などの資格取得を支援する制度も、常勤向けに手厚く用意されていることがあります。
将来的にマネジメント職や専門職を目指したい人、最新の医療・看護知識を継続的にアップデートしたい人にとって、常勤はキャリアアップの面で大きなメリットがあります。
看護師が常勤で働くデメリット

常勤には多くのメリットがある一方で、負担が大きくなりやすい側面も無視できません。
特に、夜勤を含むシフト勤務や残業、人員配置の状況によっては、心身ともにハードな働き方となる可能性があります。
また、家庭や育児との両立が難しくなるケースや、体調を崩しても休みにくいと感じる人も少なくありません。
ここでは、常勤として働くうえで生じやすいデメリットを整理し、自分の生活や体力・気力と照らし合わせて考える材料にしていただきたいと思います。
勤務時間が長くシフトも不規則
常勤では、早番・日勤・遅番・夜勤などの交代制勤務が一般的で、生活リズムが不規則になりがちです。
夜勤明けの疲労や睡眠不足が蓄積すると、体調を崩したり、メンタル面の不調につながるリスクもあります。
また、病棟の忙しさによっては定時で帰れず、残業が常態化している職場も存在します。
こうした不規則な働き方は、家族との時間を取りにくくしたり、子どもの生活リズムと合わないなど、家庭生活への影響も大きくなります。
若いうちは対応できても、年齢を重ねるにつれて夜勤や長時間労働がつらくなる人も多く、将来的な働き方も見据えた検討が必要です。
責任の重さと精神的負担
常勤看護師は、病棟や部署の中核として配置されることが多く、患者の全体像を把握し、チームを支える役割を担います。
そのため、急変時の対応や家族への説明、新人指導、業務改善など、臨床以外の業務も含めて責任が重くなりやすい立場です。
勤務中に次々と業務が発生し、常に時間と効率を意識しながら動かなければならないことも、精神的なプレッシャーにつながります。
責任を担うこと自体はやりがいにも直結しますが、過度な負担が続くとバーンアウトや離職リスクを高めます。
とくに、人員不足の環境では、常勤に業務が集中しやすく、「休みでも連絡が来る」「有給が取りづらい」といった状況に悩む声も聞かれます。
責任の重さをどこまで受け止められるか、自身の性格やストレス耐性も踏まえて判断することが大切です。
家庭・子育てとの両立の難しさ
小さな子どもがいる場合や、家族の介護を担っている場合、常勤でのシフト勤務は家庭との両立を難しくする要因になりがちです。
突然の発熱や行事への参加、送迎の時間など、子育てには予測不能な事態がつきものですが、病棟勤務では急な休みが取りづらいケースもあります。
また、日勤帯の残業や、夜勤前後のコンディションを考えると、家庭内での役割分担をしっかり調整しなければ負担が集中してしまいます。
パート勤務に比べて、時間の裁量が限られることから、「小学校入学までは常勤を避ける」「家族のサポート体制が整ってから常勤に戻る」といった選択をする看護師も多くいます。
常勤を希望する場合は、職場の理解やシフトの柔軟さだけでなく、パートナーや家族との協力体制を含めたトータルの支えが重要になります。
看護師がパートで働くメリット
パート勤務は、自分の生活リズムや家庭の状況に合わせて働きたい看護師にとって、大きな選択肢となっています。
勤務日数や時間帯を調整しやすく、夜勤なし・残業ほぼなしといった条件で働ける職場も多いため、体力的負担を抑えつつ看護の仕事を続けることが可能です。
また、結婚・出産・育児・介護など、人生のさまざまなライフイベントに対応しやすい柔軟性も魅力です。
ここでは、看護師がパートとして働くことによる代表的なメリットを整理して解説します。
働く時間や曜日を調整しやすい
パート勤務の最大のメリットは、勤務時間や曜日を比較的自由に設定しやすい点です。
午前のみ、午後のみ、週2〜3日程度など、自分の生活スタイルに合わせた働き方が選択しやすくなります。
子どもの送迎時間に合わせて勤務時間を決めたり、家族の通院日を考慮してシフトを組んでもらうなど、柔軟な調整が可能な職場も増えています。
また、繁忙期や行事前のみ出勤日数を増やすなど、家庭側の事情に応じてボリュームを調整できるのも利点です。
これにより、「フルタイムは難しいが、看護師として働き続けたい」というニーズに応えることができます。
体力面やメンタル面の負担を抑えながら、長く現場に関わりたい人にとって、時間の裁量が大きいことは非常に魅力的です。
家庭や育児との両立がしやすい
パート勤務は、特に子育て中や介護中の看護師に選ばれやすい働き方です。
日中の限られた時間だけ働くことで、保育園や学校の行事、通院付き添いなど、家庭の予定を優先しやすくなります。
夜勤なし・土日祝休みの職場を選べば、家族と同じリズムで生活しやすくなる点もメリットです。
また、子どもの成長段階に応じて、週2日から週4日へと徐々に勤務日数を増やしていくなど、柔軟に働き方を変えやすい点も見逃せません。
育児がひと段落するまでの一定期間、パートで無理なく働き続けることで、完全な離職によるブランクを防ぎ、復職しやすい状態を保つことにもつながります。
心身の負担を抑えつつ看護を続けられる
フルタイムのシフト勤務が体力的に厳しい場合でも、パートであれば勤務時間や業務量を絞ることで、心身の負担を軽くできます。
夜勤や残業が少ない職場を選べば、生活リズムも整いやすくなり、体調管理もしやすくなります。
「看護の仕事は好きだが、今の自分にはフルに働く余力がない」という人にとって、ペースダウンしながら現場に関わり続けられることは大きな利点です。
さらに、クリニックやデイサービス、訪問看護ステーションなど、比較的慢性期ケアや生活支援が中心となる分野でのパート勤務を選ぶと、急性期病棟のような時間的プレッシャーが軽減されるケースもあります。
自分の体調やライフステージに合わせて働くことで、燃え尽き症候群を防ぎ、看護師として長く活動し続ける土台を作ることができます。
看護師がパートで働くデメリット

一方で、パート勤務には見逃してはいけないデメリットもあります。
代表的なものとしては、収入やボーナスが抑えられやすいこと、キャリア形成や役職登用の機会が限られやすいことなどが挙げられます。
また、勤務時間が短い分、チーム内の情報共有やスキル維持の面で難しさを感じるケースもあります。
パートを選ぶ際には、「楽そうだから」というイメージだけでなく、こうしたマイナス面もきちんと理解したうえで、自分の生活設計と照らし合わせることが重要です。
収入が少なく賞与も限定的になりやすい
多くのパート看護師は時給制であり、勤務した時間分だけの給与となります。
そのため、週3日程度・短時間勤務の場合、月収は常勤の半分以下になることも珍しくありません。
また、賞与がない、もしくは支給されても常勤よりかなり少ない水準にとどまる職場も多いです。
収入が限られると、貯蓄や将来への備え、ローン審査などに影響が出る可能性もあります。
生活費の大部分を自分の収入で賄う必要がある場合は、パート勤務だけでは家計が不安定になることも考えられます。
パートを選択する前に、世帯収入全体のバランスや、必要な生活費・教育費などを具体的に試算しておくことが大切です。
キャリアアップの機会が限られやすい
パート勤務では、責任あるポジションや専門性の高い役割よりも、日々のルーチンワークやサポート業務が中心になることが多いです。
そのため、新たなスキル習得やリーダー経験を積む機会が常勤に比べて少なくなりがちです。
また、研修や勉強会が勤務時間外に設定されている場合、参加が難しいと感じることもあります。
結果として、長期間パート勤務を続けると、履歴書上は「経験年数」は積み上がるものの、スキルや役職の面での伸びが限定的になるリスクがあります。
将来的に常勤へ戻りたい、あるいは専門職を目指したいと考えている場合は、パートであっても学び続ける姿勢を保ち、可能な範囲で研修や勉強会に参加するなど、意識的なキャリア形成が必要です。
職場によっては雇用の安定性に不安も
パートは、有期契約で一定期間ごとに契約更新を行う形が一般的です。
多くの場合、真面目に勤務していれば更新されますが、病棟再編や経営状況の変化により、シフト削減や雇用調整の対象になりやすい立場でもあります。
常勤に比べて「組織にとって代替しやすい」とみなされるケースもゼロではありません。
また、勤務日数が少ない場合、急な欠員が出た際にシフト調整の対象として声がかかりやすく、希望外の時間帯に出勤を求められることもあります。
自分の生活とバランスを取りながら働くためには、採用時に雇用条件やシフトの柔軟性、契約更新の方針などをしっかり確認し、納得したうえで勤務を開始することが重要です。
パートと常勤の違いを項目別に比較
ここまで、パートと常勤それぞれのメリット・デメリットを個別に見てきましたが、実際に自分の働き方を選ぶ際には、両者を同じ軸で比較してみることが大切です。
収入、勤務時間、福利厚生、キャリア、ワークライフバランスなど、複数の視点から一覧で整理することで、自分が何を重視しているのかがより明確になります。
以下では、代表的な比較項目を表にまとめたうえで、それぞれのポイントを解説します。
この比較を参考にしながら、自分にとって譲れない条件と、妥協できる条件を整理してみてください。
収入・賞与・昇給の比較
まずは、多くの人が気になる収入面について、パートと常勤の違いをまとめます。
| 項目 | 常勤 | パート |
|---|---|---|
| 基本給 | 月給制で安定しやすい | 時給制が中心、勤務時間に比例 |
| 賞与 | 年2回など、比較的充実していることが多い | なし、もしくは支給額が少ない場合が多い |
| 昇給 | 勤続年数や評価により定期的に昇給 | 昇給はあっても緩やか、ない場合も |
| 年収イメージ | パートより高くなりやすい | 勤務日数・時間に大きく左右される |
生活費の大部分を自身の収入で賄う必要がある場合や、将来的な貯蓄・ローンなどを考えると、常勤の方が計画を立てやすいといえます。
一方で、世帯収入に余裕があり、収入よりも生活リズムや心身の余裕を重視したい場合には、パートの収入でも十分というケースもあります。
勤務時間・シフト・夜勤の比較
次に、日々の生活に直結する勤務時間やシフト、夜勤の有無について比較します。
| 項目 | 常勤 | パート |
|---|---|---|
| 勤務時間 | 週40時間前後が基本 | 週数時間〜30時間程度まで幅広い |
| シフト | 早番・日勤・遅番・夜勤など交代制が多い | 日勤のみ、午前のみなど固定しやすい |
| 夜勤 | ありの職場が多い | 基本はなし、希望すれば夜勤ありの職場も |
| 残業 | 病棟では発生しやすい | 発生しても短時間にとどまる傾向 |
夜勤や残業に耐えうる体力・気力があるか、家族の生活リズムとどう折り合いをつけるかが重要なポイントです。
平日にしっかり働いて週末を休みたいのか、短時間でこまめに働きたいのか、自分の理想の一週間のイメージを描きながら比較してみてください。
福利厚生・社会保険・退職金の比較
最後に、見落とされがちですが長期的に大きな差となる福利厚生や社会保険について比較します。
| 項目 | 常勤 | パート |
|---|---|---|
| 社会保険 | 原則すべて加入 | 勤務時間等の条件を満たせば加入 |
| 退職金 | 制度がある職場が多い | なし、または対象外となることが多い |
| 休暇制度 | 有給休暇、産休・育休、介護休暇など利用しやすい | 法定通りだが、運用は職場次第 |
| 研修・教育 | 院内研修が充実していることが多い | 参加機会が限定的な場合も |
特に、退職金や厚生年金の有無は、将来の生活資金に大きな影響を与えます。
短期的な働きやすさだけでなく、老後も含めた長期的な視点で、どの程度の保障が必要かを考えることが大切です。
ライフステージ別 看護師はパートか常勤かどっちが向く?
看護師のベストな働き方は、年齢やライフステージによって大きく変化します。
独身でフルに働ける時期と、出産・育児・介護など家庭の事情を抱える時期では、優先すべきポイントが異なるからです。
ここでは、代表的なライフステージごとに、パートと常勤のどちらが向きやすいか、その理由や考え方のヒントを解説します。
あくまで一般的な傾向であり、必ずしも全員に当てはまるわけではありませんが、自分の今とこれからを考えるうえでの参考にしてみてください。
独身・20代〜30代前半の場合
この時期は、体力的にも余力があり、キャリア形成のゴールデンタイムともいえます。
可能であれば、急性期病棟や専門性の高い領域で常勤としてしっかり経験を積むことで、その後の働き方の選択肢が一気に広がります。
リーダー業務やプリセプター経験、認定看護師などの資格取得にも挑戦しやすいタイミングです。
一方で、プライベートの時間や趣味を大切にしたい場合や、心身の負担が大きすぎる環境にいる場合は、常勤にこだわらず、残業の少ない職場やパートへの切り替えを検討するのも選択肢です。
ただし、将来のキャリアの広がりを考えると、完全に現場から離れるよりも、できる限り臨床経験を積んでおくことがおすすめです。
結婚・妊娠・子育て期の場合
結婚や妊娠、出産を経て子育てが始まると、生活の中心はどうしても家庭側に移ります。
夜勤や不規則勤務が難しくなるケースが多く、パート勤務や日勤常勤、外来やクリニックなどへの転職を検討する人が増える時期です。
特に、保育園の送迎や急な発熱対応などを考えると、時間の裁量が大きいパートのメリットは非常に大きく感じられます。
一方で、産休・育休制度や時短勤務制度が整っている職場であれば、常勤のまま制度を利用して働き続けることも十分可能です。
この場合、収入や社会保険を維持しやすく、将来のキャリア断絶を防ぐことができます。
自分の希望だけでなく、職場の制度や周囲の協力体制も含めて、現実的に両立可能な選択肢を検討することが大切です。
子育てが落ち着いた後・40代以降の場合
子どもが成長し、手がかからなくなってきたタイミングで、「もう一度しっかり常勤で働きたい」と考える看護師は少なくありません。
この場合、それまでパートで維持してきた経験やスキルが、常勤復帰の大きな後押しになります。
また、教育係やマネジメントなど、年齢と経験を活かせる役割への期待も高まります。
一方で、40代以降になると体力面の負担も意識せざるを得なくなります。
夜勤の有無や残業の頻度、担当部署の忙しさなどを慎重に見極めながら、無理のない範囲で常勤を選ぶことが重要です。
「週数日はパート、残りは家庭や自分の時間」という働き方をあえて維持し、長く働き続けることを優先する選択肢も十分現実的です。
後悔しないための選び方とチェックリスト
パートか常勤かを決めるとき、多くの人は「今の状況」に目を向けがちですが、数年先を見据えた選択をしておくことが、後悔を減らすポイントです。
また、勤務先によって同じ「パート」「常勤」でも働き方が大きく異なるため、求人票だけで判断せず、面接や見学での確認も欠かせません。
ここでは、働き方を選ぶ際に意識したいポイントや、具体的なチェックリスト、転職や勤務形態変更をスムーズに進めるコツを紹介します。
自分の優先順位を整理する
まず取り組みたいのは、自分が何を一番大切にしたいのかを言語化することです。
例えば、次のような項目について、優先度を高・中・低で分類してみてください。
- 収入水準と賞与の有無
- 勤務時間の自由度
- 夜勤の有無
- キャリアアップや役職への意欲
- 家庭や趣味の時間の確保
- 体力的・精神的負担の許容範囲
この作業を行うことで、「収入さえ確保できれば多少忙しくてもよい」のか、「多少収入が減っても、家庭との両立を優先したい」のかなど、自分にとっての最適解が見えやすくなります。
また、家族と生活を共にしている場合は、パートナーや家族とも話し合い、家計や家事分担、子育て方針などを踏まえたうえで働き方を決めることが大切です。
職場見学・面接で確認すべきポイント
同じ「常勤」「パート」という名称でも、職場によって実際の働き方は大きく異なります。
転職や勤務形態の変更を検討する際は、求人票だけに頼らず、必ず面接や見学で具体的な条件を確認するようにしましょう。
確認したい代表的なポイントは次の通りです。
- 残業時間の実態、月平均の残業時間
- 夜勤回数や夜勤体制(看護師人数など)
- パートの社会保険加入条件と適用状況
- 有給休暇の取得状況、希望休の通りやすさ
- 小さな子どもがいる職員への配慮の実績
- 教育・研修体制、キャリア支援の有無
こうした点を事前に確認しておくことで、「想像していた働き方と違った」というミスマッチを減らし、納得感のある選択につながります。
転職・勤務形態変更の進め方
常勤からパートへ、あるいはパートから常勤へと働き方を変える場合は、いきなり大きく環境を変えるのではなく、段階的な移行を意識するとスムーズです。
例えば、現在の職場で勤務時間を少しずつ調整できないか相談したり、院内の別部署への異動を検討するなど、同じ組織内での働き方変更も一案です。
転職を伴う場合には、自分の希望条件を明確にしたうえで複数の求人を比較し、可能であれば複数施設を見学して雰囲気や働き方を確かめることが望ましいです。
また、ブランクがある場合やパート勤務が長かった場合でも、不安を抱えすぎず、自分が培ってきた経験や強みを整理し、自信を持ってアピールすることが重要です。
働き方を選ぶときの簡易チェックリスト
- 今後3〜5年のライフプランを書き出したか
- 必要な月額収入と年間収入を概算したか
- 希望する勤務時間帯と日数を明確にしたか
- キャリアアップへの希望の有無を整理したか
- 候補となる職場の実態を確認したか
これらを満たしたうえで決めると、後悔しにくくなります。
まとめ
看護師がパートか常勤かを選ぶ際には、「どちらが良い・悪い」ではなく、「自分の今とこれからにどちらが合っているか」という視点が欠かせません。
常勤は、収入や福利厚生が安定し、キャリアアップの機会も多い一方で、夜勤や残業、責任の重さなど、心身への負担が大きくなりがちです。
パートは、時間の柔軟性や家庭との両立、体力的な負担の軽さが魅力ですが、収入や賞与、キャリア形成の面では制約が生じることがあります。
大切なのは、収入、時間、キャリア、家庭、それぞれの優先順位を自分の言葉で整理し、ライフステージに応じて柔軟に働き方を選び直していくことです。
看護師としてのキャリアは長く続きます。
一時期はパートで生活を整え、その後常勤に戻る、あるいはその逆も含めて、働き方を固定的にとらえず、「今の自分にとって最善のバランス」を探し続ける姿勢が重要です。
本記事の内容を参考に、自分らしい看護師人生を描く一歩を踏み出していただければ幸いです。