少子高齢化が進む医療・介護の現場では看護の需要が増大しています。看護師不足が常態化する一方、将来的に看護師が余る(飽和)という話も耳にします。
最新の需要予測や政策動向を踏まえ、看護師の将来性を検証します。現場目線で需給バランスとキャリア形成のヒントを解説します。
目次
看護師の将来は飽和状態になる?需要と供給の見通し
看護師不足が長年続く日本では、多くの医療・介護現場で人材不足が問題となっています。看護系学校の定員増や合格者数の増加で看護資格者数は増えていますが、現場で働く看護師は依然として不足しています。
厚生労働省の将来推計によると、2025年時点で看護職員の需要は約188万~202万人、供給は約175万~182万人と試算されており、数万人の人手不足が続く見込みです。飽和説は古い予測に基づく誤解であり、看護師不足が今後も課題となることが分かります。
看護師需要の増加要因: 医療・介護ニーズの拡大
急速に進む少子高齢化に伴い、医療・介護分野の需要は今後も急増すると予想されます。団塊の世代(1947~49年生まれ)が後期高齢者となる2025年には、65歳以上が人口の約3割に達すると見込まれており、その影響で医療ニーズがさらに高まります。
この超高齢化に伴い、従来病院中心だったケア体制が在宅医療や介護サービスにシフトしています。訪問看護ステーションや介護施設など在宅・地域ケアの需要が増大し、看護師が活躍する機会が急増しています。
少子高齢化社会に見る看護師需要の変化
日本は超高齢化社会に突入しており、今後も医療・介護のニーズが急増する見込みです。本見出しでは、高齢化が看護師需要に与える影響を解説します。
超高齢化と医療・介護需要の増大
急速に進む少子高齢化に伴い、医療・介護分野の需要は今後も急増すると予想されます。団塊の世代が後期高齢者となる2025年には、高齢者人口が全体の約3割に達すると見込まれており、その影響で医療ニーズがさらに高まります。
こうした超高齢社会では、従来病院中心だった医療体制が在宅医療や介護サービスにシフトしています。訪問看護ステーションや介護施設など在宅・地域ケアの需要が増大し、看護師が活躍する機会が急増しています。
地域包括ケアシステムと在宅看護の拡充
近年、政府は地域包括ケアシステムの構築を推進しており、高齢者が住み慣れた地域で医療・看護サービスを受けられる体制を整備しています。在宅医療や訪問看護の枠組みが強化されることで、これらの分野での看護師需要はさらに増加すると考えられます。
認知症・慢性疾患患者増加によるケア拡大
高齢者人口の増加は認知症や生活習慣病を持つ患者の増加にもつながります。これらの患者に対するケアニーズが高まるため、看護師には認知機能低下への対応や慢性疾患管理など、高度で継続的なケア提供能力が一層求められます。
看護師供給の現状と課題: 養成・就業・離職の動向
看護師の供給を支える要素として、看護教育の動向や就業環境があります。本見出しでは、看護師となる人の数や就業後の離職・復職の状況など、供給面の課題を解説します。
看護師養成数と新規就業者の推移
令和2年(2020年)の統計では、看護師として就業している人は約128万名、准看護師が約28万名と報告されています。他に保健師や助産師も含めると、日本の看護職員は合計で約160万人に上ります。
離職率・復職者: 人材流出と定着支援
しかし、全員が長期間にわたり働き続けるわけではありません。看護師は女性が多い職業で、結婚や出産・子育てを機に一時離職する人が少なくありません。そのため多くの資格保持者がいても、実際の就業者数増加には限りがあります。
潜在看護師の再就業促進
離職中の看護師(潜在看護師)を職場に戻す取り組みも進められています。再就職支援研修の拡充やナースセンターによるマッチング支援などにより、結婚・育児などで離れた看護師の社会復帰が後押しされています。
多様化する看護人材: 男性・外国人看護師
看護師不足克服には多様な人材が求められています。近年は男性看護師や外国人看護師も増加しています。男性看護師は全体の割合が徐々に高まり、職場の人手不足解消に貢献しています。また、日本政府は介護分野での外国人材受け入れを拡大しており、看護領域でも外国人看護師の増加が期待されています。
看護師余剰説の誤解: 2025年問題と将来予測
看護師が余るという説が流れる背景には、過去の試算や予測が大きな影響を与えています。本見出しでは、2025年問題に関連して出てきた飽和説の出所を探り、最新の見通しと比較してその誤解を解消します。
2025年問題とは: 高齢化による社会の転換点
「2025年問題」とは、団塊の世代全員が75歳以上となることで医療・介護・社会保障に大きな転換点が生じるとされる問題です。2025年には高齢化率が約30%に達し、労働力不足や社会保障の財源不足などが懸念されています。看護師にとっては医療・介護需要が一挙に増大する局面であり、この時期の需給バランスが注目されています。
飽和説発生の背景: 過去の予測とその誤解
看護師が余るという噂は、主に過去に行われた試算やコンサルティング会社の予測に由来しています。ある医療系コンサル会社が2014年に公表した試算や、当時の診療報酬見直しに伴う議論結果などが拡散し、「将来飽和する」と誤解されることがありました。
しかし、これらの資料は仮定に過ぎず、実際の需要予測とは乖離しています。最新の厚生労働省の資料では看護師供給が需要を上回るとはされておらず、依然として需要過多の見通しが示されています。飽和説はいずれも現在の主流見解ではないといえます。
最新データと専門家見解: 不足継続の見込み
現在の統計データや専門家からは、将来も看護師が不足するとの見方が示されています。医療機関や業界団体の報告でも、都市部・地方を問わず看護師確保が重要課題となっており、多くの施設で求人が続いています。日本看護協会などの専門団体も、看護人材の確保施策を強化すべきと訴えており、近年において看護師が飽和している状況ではないことが分かります。
まとめ
高齢化の進行に伴い医療・介護のニーズは拡大し、将来にわたり看護師不足が最大の課題であることが改めて確認できました。一方、看護師が余るという説は古い予測に基づく誤解にすぎません。現場では依然として病院や介護分野で看護師が求められており、在宅や地域でのケア需要も高まっています。今後は専門性の高いケア対応やICT活用力の向上などが求められ、転職や資格取得によるスキルアップはキャリア形成の大きな武器となるでしょう。
看護師という職業の将来性は依然として高く、多様な働き方も選択可能です。本記事が皆さんのキャリア形成に少しでも役立てば幸いです。