看護師をはじめ医療従事者が働く病院では、慢性的な人手不足や過重労働が深刻化しています。何となく「この病院、辞めたほうがいいかも…」と感じる前に、まず客観的な兆候を確認することが大切です。先行する調査によれば、多くの看護師が過去に「辞めたい」と考えた経験があり、その背景には長時間労働や休息不足があるとされています。
本記事では、こうした実態も踏まえつつ「辞めたほうがいい病院」に共通する7つの危険サインを解説します。自分の職場に当てはまるものがないか、ぜひチェックしてみてください。
目次
病院を辞めたほうがいいと感じる7つの兆候
以下のサインはブラックな職場環境や過重労働を示唆する典型的な例です。いずれかに当てはまる場合は、精神的・肉体的な負担が蓄積する前に環境を見直すことを検討しましょう。実際の調査でも、8割近くの看護師がかつて「辞めたい」と感じた経験があり、その背景には長時間労働や休憩不足が多いと報告されています。
過剰な残業と休憩不足
常に時間外勤務が発生し、定時で帰れないケースは大きな警告です。厚生労働省の指針を大きく超える過重労働が常態化していませんか?日勤中でも夜まで残業が当たり前になっていたり、終業後に事務作業が残されて休憩すら取れなかったりする状況は危険信号です。
- 勤務終了予定時刻を頻繁に超過して残業が発生している
- 夜勤明けに十分な休息を取れずに次のシフトに入っている
- 法定以上の休憩時間が確保されていない
このような状況では精神的・肉体的な消耗を招きます。特に高齢者医療や地域包括ケアのニーズが高まる中、多くの病院で柔軟な働き方(時短勤務や多様な勤務形態)の導入が進んでいます。例えば2025年の調査によれば約4割の病院が多様な勤務制度を導入しています。それでも旧来の長時間労働体制に固執する職場では、環境改善の見込みは薄いといえるでしょう。
給与や待遇が著しく低い
給与や各種手当が周囲の同規模病院と比べて著しく低い場合は要注意です。厚生労働省の調査でも、一般病院勤務の看護師平均年収はおおむね400万円台後半とされています。これを大幅に下回っていたり、数年間にわたって昇給・賞与の増額もほとんどない状態では、経営陣が人材育成に適切に投資していない恐れがあります。
- 同規模・同一地域の病院より明らかに給与水準が低い
- 昇給や賞与の支給額が数年以上ほとんど変化していない
- 夜勤手当や資格手当など基本的な手当が支給されていない
給与や待遇は生活設計にも直結する重要な要素です。ハードワークに見合わない報酬ではモチベーションが下がりやすく、人手不足のこの時代に待遇の悪い病院に留まる必要はありません。自分の将来計画と照らし合わせて納得できる条件か判断し、条件交渉や転職を検討しましょう。
看護師の定着率が低い
職場に中堅・ベテラン看護師が極端に少なく、新人ばかりが入れ替わるような環境も危険サインです。離職率が高い病院では常に人手不足が続き、一人ひとりの負担が増えてしまいます。新人ばかりで中堅が育たない状況は、慢性的な人手不足の悪循環を生みます。
- ベテラン看護師が数年ごとに退職し、新人が多くなっている
- 3年以内に退職する看護師の割合が著しく高い
- 看護師の平均勤続年数が極端に短い
このままでは若手看護師への負担が集中し、さらに離職者が増えます。人手不足が慢性化すると1人当たりの業務量も増えて環境は悪化の一途をたどるでしょう。組織改革が進まない職場では根本的な解決が難しく、今後も状況が改善する見込みは低いと言えます。
休暇が取りにくい
有給休暇や公休の取得が著しく困難な職場は警戒すべきです。医療機関ではシフト調整が難しい面もありますが、申請しても休暇が承認されない、体調不良や家庭の事情でも休めない雰囲気があるようでは問題です。休日出勤ばかりが続いていませんか?
- 休暇申請を出してもなかなか許可されない
- 病気や家庭の急用があっても休みにくい雰囲気がある
- 休日出勤や呼び出しが常態化している
休息が取れず疲労が蓄積すると、ミスや医療事故のリスクが増します。特に新人教育中や繁忙期に長期で休めない状態が続くと、職員の健康と患者の安全に深刻な悪影響が及ぶおそれがあります。ワークライフバランスが大きく崩れたままでは、いくらやりがいがあっても継続は難しいでしょう。
職場の人間関係・マネジメントに問題
理不尽な叱責やいじめ、派閥といった職場の人間関係に問題がある環境も要注意です。医師との連携が取れず板挟みになる状況も同じく大きなストレス要因です。厚生労働省の調査でも、職場の人間関係やマネジメントは看護師の離職理由の上位に挙がっています。評価制度が不透明で頑張りが認められない職場も大きな不満につながります。
- 上司や同僚からのパワーハラスメントや理不尽な言動が横行している
- 病院上層部が現場の声を聞かず、改善に動かない
- スタッフ間の連携が悪く、情報共有が不十分でコミュニケーションが欠けている
このような環境では精神的なプレッシャーが増し、本来の業務に集中できなくなります。相談相手がいない場合、どれだけ頑張っても状況が変わらずフラストレーションが溜まる一方です。看護協会など専門機関も職場環境の改善の必要性を訴えており、問題が放置された職場に長く留まるメリットは少ないと言えます。
キャリアアップの機会が乏しい
教育研修制度やキャリア形成の支援が整っていない職場は、働き続ける意欲が削がれやすくなります。専門家の意見でも、キャリア支援が不十分だと離職率が上がるとされています。院内研修が少ない、資格取得支援がないといった環境では、自分の成長を実感しにくい状況です。
- 院内研修の機会が少なく、独自の教育カリキュラムが整備されていない
- 専門資格取得の費用支援がなく、研修のサポートもない
- キャリアパスが明確でなく、昇進や異動の見通しが立たない
学びや挑戦の機会がなければ長期的なモチベーションを維持できません。特に医療の高度化が進む中、常に新しい知識・技術が求められています。自己成長を諦めざるを得ない環境で停滞感が強いなら、他の病院で新しい経験を積むメリットを考えてみてください。
患者安全・医療の質が軽視されている
看護師として最も看過できない兆候は、患者ケアよりも人員確保やコスト削減が優先されている職場です。医療安全ルールが守られず、事故報告や改善策が機能していないような医療機関では、患者も看護師も大きなリスクにさらされます。
- 医療事故やヒヤリ・ハットの発生が頻繁に起きている
- 感染対策などの基本的な安全管理が徹底されていない
- 現場からの意見やクレームが無視され、安全対策に反映されない
このような状況では看護師自身も倫理的な葛藤に悩まされがちです。「看護師自身が安全な職場づくりに携わるべき」と提言する専門家もいますが、意見を聞き入れてもらえない環境に留まることは自分と患者の安全を危険にさらすことになります。安全管理が疎かになっている職場に固執せず、早めに転職を検討する判断が求められます。
辞める前に確認したい3つのポイント
上記のサインに1つでも当てはまる場合、「本当に辞めるべきか」と悩む人も多いでしょう。退職を決意する前に冷静に考えたい3つのポイントをまとめます。
自分の働き方や条件を整理する
まず自分がどんな働き方を優先したいか整理しましょう。例えば、育児や介護と両立したいのか、夜勤も含めて高収入を目指すのか、専門分野でスキルを伸ばしたいのか、といった条件を明確にしてください。現在の職場で部署異動や希望シフトの相談ができないか再度確認し、自分の希望や優先順位を整理してみましょう。
転職市場や求人情報を調べる
転職を決断する前に、希望条件に合う求人がどれくらいあるか調べておきましょう。看護師は全国的に人手不足で高い需要が続いており、待遇の良い求人も多く出ています。
- 看護師向け求人サイトや転職エージェントで給与・勤務条件を比較する
- 同僚やSNSを通じて他病院の職場事情をリサーチする
- ハローワークや病院説明会で直接求人情報を収集する
こうして複数の情報を比較すれば、今の職場と他施設の違いが明確になります。地方の小規模病院やクリニックでも条件の良い募集が出ている場合があるので、選択肢を広げましょう。
心身の健康状態を優先する
どれだけ仕事でも、自分の健康を犠牲にしては意味がありません。以下のような症状がある場合は、無理せず対策を考えましょう。
- 慢性的な疲労感や不眠が続いている
- 集中力が続かず、ミスが増えている
- 仕事のストレスが家庭生活にも影響している
状況が深刻な場合は産業医やカウンセラーに相談し、休職や部署異動も検討してください。それでも改善が見られない場合は、自身と患者の安全のためにも早めに転職を考えましょう。
転職活動を上手に進めるための対策
辞める決意を固めたあと、新しい職場への再スタートに向けた準備をしましょう。特に看護師転職では専門性と適応力が重視されるため、計画的に取り組むことが重要です。
看護師専門の転職サービスを利用する
転職サイトやエージェントを利用すると、非公開求人や病院の内情など貴重な情報を効率的に集められます。自分一人で探すよりも求人の幅が広がるうえ、面接日程の調整や条件交渉など手厚いサポートが受けられます。在職中でも担当者に連絡すればスケジュール調整の相談に乗ってもらえるため、安心して活動できます。
職務経歴書や面接のポイントを整理する
転職準備では履歴書や職務経歴書をしっかり作り込みましょう。これまでの経験や資格を書き出し、応募先でどのように活かせるか整理しておくと話がスムーズになります。面接では「退職理由」だけでなく「新しい職場でどんな貢献ができるか」を具体的に伝えられると評価が高まります。ネガティブな理由だけでなく、前向きなキャリア目標も併せて話すと印象が良くなります。
在職中に体制を整える
現職を続けながら転職活動をするときは、上司への報告や勤務調整など誠実な対応が大切です。面接のために休暇を取る場合は事前に相談し、就業規則に沿って進めましょう。また退職後すぐに結果を求めすぎず、新しい環境に慣れるための余裕も考慮してください。退職前には業務引継ぎや後輩への説明など、円満退社のための準備を怠らないことも重要です。
まとめ
「この病院、辞めたほうがいいかも…」と感じても、まずは状況を冷静に整理することが重要です。長時間労働や休暇取得の難しさ、給与・待遇、人間関係、安全管理のポイントを確認し、該当する項目がないかチェックしましょう。複数のサインが当てはまる場合や心身の疲労が著しい場合は、早めに転職も視野に入れて検討してください。
一方で、自分の希望する働き方やキャリアを明確にし、求人情報を比較すれば、看護師不足の今でも条件に合った職場を見つけやすくなります。自身の健康と将来を第一に考え、より良い職場環境を求めて行動しましょう。
看護師として勤務を続けることには大きなやりがいがありますが、心身の健康を損なうほど無理をする必要はありません。体調不良や長時間労働が続く場合は、上司や産業医に相談して職場環境の改善を図りましょう。職場が変わらないようなら、自分自身と患者の安全を守るために転職を検討することも大切な選択肢です。