看護師の仕事にはオムツ交換などの排泄介助も含まれますが、これに強い抵抗を感じる人も少なくありません。「自分だけなのでは?」と悩む方もいるでしょう。
本記事では、看護師がオムツ交換をしたくないと感じる理由とその対処法、そして看護師として働き続ける選択についてわかりやすく解説します。
目次
看護師でもオムツ交換したくないと感じる理由
看護師として働き始めたばかりの新人から長年現場で働くベテランまで、多くの看護師が排泄介助に抵抗感を抱くことがあります。
その背景には、次のような理由があります。
生理的な負担:匂いや汚れへの抵抗
排泄物に含まれる臭いや汚れは、人間の生理的反応として強い嫌悪感を引き起こします。例えば、悪臭にさらされると吐き気や頭痛を感じることが科学的にも示されており、看護師だけが特別に感じるわけではありません。
この反応は感染リスクから自身を守るために備わった防御反応であり、克服すべき欠点ではありません。
精神的な負担:患者の尊厳と羞恥心
患者の排泄介助をする際には、その人の尊厳やプライバシーを守りながらケアを行う必要があります。下の世話をされること自体に羞恥心を持つ患者もおり、申し訳ないと感じさせないよう慎重かつ丁寧に対応する精神的プレッシャーが伴います。
患者の安心感を優先するあまり、自分の気持ちを抑えて負担を感じる方も少なくありません。
環境的な負担:人手不足と時間的プレッシャー
病院や施設では慢性的な看護師不足が続いており、1人あたりの受け持ち患者数が多くなりがちです。排泄介助は突発的に発生するため、重症患者のケアや記録業務と並行して対応しなければならず、忙しい現場では時間的な負担が大きくなります。
限られた時間内でオムツ交換を含むケアをこなすプレッシャーが、「オムツ交換なんてやっていられない」という感情につながることがあります。
経験不足による不安:新人看護師の戸惑い
特に看護師になりたての新人期は、看護技術や感染対策の習得に追われるため、オムツ交換に十分な時間と余裕が取れないことがあります。マニュアルで学んだ手順が実践できず「何から始めればいいかわからない」状態になると、オムツ交換そのものを避けたくなることもあります。
未経験から業務に慣れないうちは、精神的・技術的な不安が大きくなるため、抵抗感が高まりがちです。
オムツ交換が苦手な看護師向けの対処法・工夫

もしオムツ交換に苦手意識があるなら、いくつか工夫や対処法を試してみましょう。看護師としての責務を果たしつつ、負担やストレスを軽減する方法はいくつもあります。
衛生装備と準備で身体的負担を減らす
業務前に手袋・マスク・エプロンなどの防護装備をきちんと着用し、作業場所を換気するなどしてニオイ対策を行いましょう。目に見えない感染リスクが軽減されれば、精神的にも安心感が増します。
また、使い捨てタオルやポータブルトイレ用シートなど、オムツ交換に必要な物品を事前に準備しておくことも大切です。作業の準備が整っていれば手順がスムーズになり、余計なストレスを減らせます。
効率的なケア手順で時間短縮
オムツ交換の手順を見直し、効率化を図ります。例えば、オムツを替える際には2~3人で役割分担し、声かけと同時に動きを進めるなど、無駄な時間を省く工夫ができます。
基本動作に習熟すれば手順がスムーズになり、長時間かかる負担を軽減できます。
チームワークで助け合う
上司や先輩、同僚に相談し、サポートを得ることも重要です。看護現場はチームで動く場なので、一人で抱え込まず協力を求めることで負担を分散できます。
例えば、忙しい時間帯は同僚と交代で排泄ケアを担当したり、介護職員に協力を依頼したりしましょう。周囲の協力を得ることで心強さが増し、精神的なストレスが軽減されます。
気持ちの切り替えとメンタルケア
オムツ交換の際には深呼吸して気持ちを落ち着けたり、合間に短い休憩をとったりするなど、自分なりのリフレッシュ法を見つけましょう。また、「排泄介助も患者さんを支える大切なケアだ」と自分に言い聞かせることで、仕事への前向きな気持ちを維持できます。
それでも悩みが続く場合は、職場の相談窓口やメンタルヘルス専門家に相談してみることも有効です。一人で抱え込まず、必要に応じてサポートを活用しましょう。
オムツ交換の負担が少ない部署・働き方の選び方

どうしても排泄介助が苦手な場合は、勤務先や働き方を見直すのも選択肢です。排泄ケアが少ない環境で働くことで、負担を大きく減らすことができます。
オムツ交換の少ない診療科や職場例
- 外来・クリニック:病棟ほど排泄ケアが発生せず、問診や検査などが中心の業務内容
- 手術室:患者さんの大半が手術前後で入室しており、日常介助の機会が少ない
- 透析室:治療ベッドでの長時間透析が中心で、排泄介助の機会が比較的少ない
これらの部署ではオムツ交換にかける時間が少なくなります。一方で、チームで迅速な対応が求められる場面も多いため、必要なサポートを共有しながら業務に慣れるようにしましょう。
訪問看護・保健師など働き方の選択肢
訪問看護師や学校保健師、産業看護師などは、病棟勤務に比べて排泄介助の頻度が低いことがあります。利用者や職場環境が異なるため、生活指導や健康管理が中心となり、オムツ交換は必要に迫られた時程度になる場合が多いです。
看護師資格を活かした他職種への転職
「看護師資格はあるが下の世話をしたくない」という場合は、医療事務や看護コーディネーター、医療機器営業、看護教育(講師)などの職種も検討できます。
これらの仕事では直接的な排泄介助を行う機会がほとんどないため、自分の看護経験を生かしつつ別の分野で働くことが可能です。
オムツ交換が嫌でも看護師を続けるか考えるポイント
オムツ交換の苦手意識で看護師を辞めようか迷うときは、自分の気持ちと将来を冷静に見つめ直すチャンスです。このまま看護師を続けるか、ほかの道を探るか、以下のポイントを参考にしてみてください。
看護師になった原点と仕事の魅力を再確認
改めて看護師を目指した理由や看護のやりがいを振り返ってみましょう。患者さんの小さな変化に気づく喜びや、家族からの感謝など、オムツ交換以外にも看護の魅力はたくさんあります。
排泄介助だけにフォーカスせず、患者さんの健康回復やチーム医療で果たせる役割にも目を向けることで、仕事全体へのモチベーションが高まります。
相談・サポートを活用して心の負担を軽減
職場の上司や先輩に悩みを打ち明け、配置転換や業務分担の相談をしてみましょう。同じ悩みを共有する仲間と情報交換するのも有効です。
最近は病院内に相談窓口やメンタルヘルス支援体制が整った職場も増えています。専門家に相談することで気持ちが整理され、新たな解決策が見つかることもあります。
キャリアの視野を広げる:転職も一つの手段
看護師としてのキャリア全体を考え、異動や転職の可能性も視野に入れましょう。排泄介助の少ない分野や他の医療・福祉職種で経験を積み、一度看護から離れてみるのも選択肢です。
例えば、数年経験を積んだ後に再度看護師として復職する人もいます。最終的には、自分の適性と価値観を踏まえて無理のない働き方を選ぶことが大切です。
まとめ

「看護師なのにオムツ交換をしたくない」と感じるのは、生理的・心理的に自然な反応であり、特別なことではありません。まずは自分の気持ちを認めた上で、衛生対策や手順の工夫、周囲への協力依頼など現場でできる対処を試してみましょう。同時に看護師としてのやりがいも振り返りながら、自分に合った職場や働き方を探ることが重要です。
看護師を続けるかどうかは重要な決断ですが、ここで紹介したポイントを参考にすれば、今後のキャリアや気持ちの整理に役立てることができるでしょう。