多忙な業務や責任を抱える中堅看護師は、日々の業務に息苦しさを感じることがあります。「もう仕事に行きたくない」という気持ちに悩む看護師も少なくありません。
本記事では、その原因と対策について詳しく解説します。看護師の離職率は全体的にも高く、新型コロナ禍以降は特にメンタル面の負担が増加しています。
調査では看護職員の約2割が「働きたくない」と感じた経験があるとされ、社会環境も背景に影響しています。以下では、中堅看護師が抱えやすい悩みと解決策を順に見ていきましょう。
中堅看護師が仕事行きたくないと感じる原因とは
中堅看護師になると、業務量や責任が一気に増え、ストレスがたまることが少なくありません。
10年以上病院や施設で働いている看護師は、診療業務のほかに委員会や研修の担当などさまざまな役割を任される機会も増えていきます。その結果、「今日も仕事に行きたくない」と感じる日が増えるのです。
実際、厚生労働省の関連調査によると、看護職員の約2割が「働きたくない」「辞めたい」と感じたことがあると報告されています。医療現場では人手不足が慢性化しており、パンデミック対応など過重な負担がかかっている状況も背景にあります。自分一人の悩みではないと理解した上で、以下の代表的な原因を見ていきましょう。
職場の人間関係と文化がもたらすストレス
職場の人間関係がうまくいかないと、出勤前から憂鬱になることがあります。先輩や上司との意見の不一致や、同僚同士のトラブルが積み重なると、毎日の看護業務への不安が増します。看護はチームワークが重要な仕事ですから、コミュニケーションの不和があると業務自体が負担に感じられてしまいます。
例えば、いつも不平不満ばかり言う同僚や指示が厳しい上司と同じシフトになると、その日は「行きたくない」と感じることもあります。人間関係のトラブルは自分では簡単に解決できないため、余計に憂うつ感やイライラ感を強めてしまいます。
過重な業務量と責任の増加
中堅看護師は病棟管理や委員会、研修会準備など、若手ナースとは比較にならない量の仕事を抱えがちです。新人指導の負担が増え、その失敗や教育の責任も自分にかかってきます。こうした仕事量と責任の重さは、一つ一つのストレスを強め、肉体的にも精神的にも疲労を蓄積させます。
たとえば、夜勤の増加や長時間労働が続くと、明確な休息時間が取れず心身の回復が追いつきません。「また夜勤だ…」という思いが続くと、次第に仕事そのものを嫌に感じてしまうでしょう。長時間労働の連続は疲弊の大きな要因となります。
キャリア停滞と自己効力感の低下
長く同じ職場で働いていると、業務がルーティン化し、新鮮さや達成感を感じにくくなることがあります。自分の成長を実感できない状況が続くと、「自分にはこの仕事が向いていないのでは」と不安になるケースも増えます。キャリアアップや給与面の展望が見えないと、自信やモチベーションが低下しがちです。
将来への不安も大きな要素です。例えば、昇進や資格取得の目標が達成できていない場合、看護師としてのやりがいを再確認できずに焦りを感じることがあります。このようなキャリアに対するモヤモヤが、「仕事がうまくいっていない」という気持ちを強める原因になります。
ライフステージの変化とワークライフバランス
結婚や出産・子育て、介護などのライフステージの変化は、働く看護師に大きな影響を与えます。中堅世代になると家庭での役割も増え、夜勤や長時間勤務が家族との時間を奪ってしまうことへの負担も出てきます。例えば、小さな子どもを抱えながら夜勤に入るのは心身ともに大変なことですし、産休・育休から復帰した直後は勤務ペースへの適応に悩む場合もあります。
家庭と仕事の両立が難しいと感じると、仕事へのモチベーションが低下しやすくなります。この時期に十分なサポートや制度を活用できていないと、「このまま続けていいのか」という不安を増長させる原因になります。
バーンアウトとメンタルヘルスのサイン
長期にわたる過重労働は心身に大きな影響を与えます。バーンアウト(燃え尽き症候群)に代表されるように、看護師は疲労が蓄積すると仕事に行くのさえつらく感じることがあります。まずは心身に表れるサインを知り、初期段階で対処することが大切です。
バーンアウト(燃え尽き症候群)の概要
バーンアウトとは、長期間の過重労働やストレスの蓄積によって、心身が極度に疲弊し、意欲や集中力が著しく低下する状態を指します。仕事に対して冷笑的な態度を取ってしまったり、以前は楽しかった看護業務が苦痛に感じられたりするのも典型的なサインです。中堅看護師は役割が増える分だけ燃え尽きのリスクも高まるため、早めに兆候を察知することが大切です。
睡眠障害や身体症状の現れ
過労や強いストレスが続くと、睡眠障害や身体的な不調が現れてきます。例えば、以前はぐっすり眠れていたのに寝つきが悪くなったり、朝起きても疲労感が抜けないケースです。また、頭痛・胃痛・肩こり・倦怠感など、漠然とした身体症状が続く場合も要注意です。これらはストレスが自律神経に作用する典型的な症状で、放置すると悪循環を招く恐れがあります。
体の不調は心の不調にもつながるため、早めに対策を始めることが大切です。
感情的な変化と心のサイン
感情面でも変化が現れます。些細なことでイライラしたり、逆に何に対してもやる気が湧かなくなっていないでしょうか。以前はおもしろいと思えていたことが楽しく感じられない、笑顔が減ったと感じたら要注意です。また、常に緊張や不安感を抱え、眠れない夜が続く場合も心身の限界を示すサインです。気分が落ち込んで家族や同僚との会話を避けたくなっているなら、一度メンタル不調を疑い、対処を考えましょう。
うつや不安症状への注意
うつ病や不安障害の初期症状も意識しておきましょう。長期間にわたって気分が著しく落ち込んだまま、日常生活に支障が出る場合は専門家への相談を検討してください。たとえば、食事や入浴も億劫になり、何をしても楽しめないといった状態が続くなら、早期治療が必要なサインです。極端にネガティブな考えが頭を占める場合は、速やかに医師やカウンセラーに相談しましょう。
仕事に行きたくない気持ちへの具体的な対策
「仕事に行きたくない」と感じたときは、自分だけを責めずにできる対策から始めましょう。まずはご自身の体と心を大切にし、休息やセルフケアを優先してください。そのうえで、必要に応じて周囲の力も借りながら、できることから改善していくことで、状態は徐々に楽になっていきます。
まずは休息と自己ケアの見直し
最初に心がけたいのは、自分を大切にすることです。無理に頑張り続けるのではなく、疲れたと感じたら積極的に休息を取りましょう。休日に趣味や軽い運動で気分転換し、栄養バランスの取れた食事を心がけてください。睡眠時間を確保し、入浴や深呼吸でリラックスできる環境を作ることも有効です。
体と心の疲労は少しずつ蓄積していきますから、早めに許可を取って休みを増やすのも重要です。長時間労働で疲弊する前に、有給休暇や連休を活用してしっかりリフレッシュしましょう。
相談とコミュニケーション: 周囲に話す
悩みを一人で抱え込まず、周囲に相談することも大切です。まずは信頼できる同僚や先輩に現在の状況や気持ちを打ち明けてみましょう。看護師同士ならではの悩みには共感が得られやすく、アドバイスをもらえることもあります。
また、信頼できる上司や管理者に相談できる場合は、勤務スケジュールや業務内容の調整を検討してもらいましょう。部署異動やシフト変更、業務分担を見直せないか話し合ってみることがポイントです。話すことで心の負担が軽くなるだけでなく、新たな対応策が見えてくることもあります。
職場での調整と環境改善
職場環境を改善する方法も検討しましょう。たとえば、夜勤回数の軽減や残業の見直しなど、勤務負担を減らす工夫を上司に相談してみてください。フレックスタイム制度の利用や時短勤務制度の相談も一案です。組織の窓口や労働組合を介して、制度活用のサポートを受けられないか確認してみましょう。
また、配置転換や異動希望を出すことも選択肢となります。自分に合わない部署から離れ、別の環境で気分をリセットできる可能性があります。病院や施設側に働きやすい環境づくりの協力を仰ぐことも、仕事に対する前向きな気持ちを取り戻す助けとなります。
専門家や相談機関の利用
職場以外のプロのサポートを利用することも重要です。例えば、職場の産業医や心理カウンセラーに相談するほか、看護協会や自治体の相談窓口を活用しましょう。専門家と話すことで、自分の状況に合った具体的なアドバイスや解決策が得られることがあります。
また、匿名で相談できる電話相談やメール相談サービスもあります。身近な人には話しにくいことも、そういった窓口なら気軽に相談できる場合があります。自分の心身の健康を守るために、必要に応じて早めに専門家に助けを求めましょう。
目標設定と自己成長の機会を探す
働く意欲を取り戻すために、新しい目標を設定する方法も有効です。興味のある専門分野の資格取得にチャレンジしたり、副業やボランティア活動で別の経験を積んだりすることで、自己成長を感じることができます。
また、管理職や教育・研究分野など、キャリアの選択肢を広げることを目指すのもよいでしょう。仕事以外の場で徐々に達成感が得られれば、再び看護業務に向き合う活力になることがあります。視野を広げて自己成長を実感すれば、新たなやる気も生まれます。
まとめ
中堅看護師として働き続ける中で「仕事に行きたくない」と感じることは決して珍しいことではありません。まずはその原因を一つずつ整理し、自分に合った対策を少しずつ試してみましょう。十分に休みをとり体調を整えることや、周囲に相談して適切なサポートを得るなど、無理をせず少しずつ状況を改善する意識が重要です。
また、転職や休職などキャリアの見直しが必要な場合は焦らず慎重に検討しましょう。看護師の資格を活かせる他の働き方や、勤務環境を変える制度がないかを確認し、必要であれば専門家やキャリアカウンセラーの意見も参考にして、自分にとって最も働きやすい環境を目指してください。以上のポイントを踏まえて、できることから働きやすい環境づくりを進めていきましょう。