点滴中に痛みや違和感があっても、どのタイミングでナースコールを押すべきか迷う方は多いです。
我慢して良い時と、すぐに呼ぶべき時の線引きが分かると安心して治療を受けられます。
本記事では、臨床での実務に基づき、緊急度の見極め方、症状別の判断、アラームへの対応、押す前後の安全な行動までを体系的に解説します。
初めての入院や付き添いの方にも役立つ最新情報です。
迷ったらどうすればよいかの基準も示します。
目次
点滴中にナースコールするタイミング
ナースコールの基本は、迷ったら遠慮なく押すことです。
点滴は薬液や補液を静脈内に直接入れる医療行為のため、違和感の背景に重い原因が隠れることがあります。
痛みや腫れだけでなく、息苦しさや発疹など全身の変化も重要なサインです。
以下では、緊急性の高いサイン、少し様子を見てもよい場合、看護師に伝える情報を整理します。
迷ったら押してよい基準
次のいずれかに当てはまる場合は、ためらわずにナースコールを押してください。
痛みが強い、または刺すような痛みが持続する。
急に腫れる、熱を持つ、点滴部位が冷たい、白っぽい、紫色になる。
寒気や悪寒、息苦しさ、めまい、吐き気、発疹やかゆみが出る。
点滴の滴下が止まる、ポンプが鳴る、血液が逆流して見える。
歩行やトイレ介助が必要。
どれにも当てはまらなくても不安が強い時は押して構いません。
すぐ呼ぶべき緊急サイン
呼吸が苦しい、ぜいぜいする、声が出しにくい、喉や唇が腫れる。
強い悪寒と発熱、急な顔面蒼白や冷汗、意識が遠のく感じ。
胸痛、動悸、ひどいめまい、全身のじんま疹。
点滴部位の急激な腫脹や焼けるような痛み。
これらはアレルギー反応や血圧変動、薬剤の血管外漏出の可能性があり、至急評価が必要です。
数分様子を見てもよい例
採血後に似た軽い鈍痛や、最初の数滴で感じる軽い違和感が一過性の場合。
腕を伸ばすと滴下が安定し、肘を曲げた時だけ止まる場合。
ポンプの一時的なアラーム後にすぐ停止した場合でも、心配なら呼んでください。
少しでも悪化したり迷いが残る場合は様子見せずにコールが安全です。
看護師が知りたい情報の伝え方
以下を簡潔に伝えると評価が速くなります。
いつから、どこが、どの程度、何をした時に症状が出るか。
アラームの有無と表示内容、滴下の状況。
服薬や既往歴で気になること。
伝えられない場合は、症状の有無だけでも問題ありません。
点滴部位が痛い・腫れる・漏れる時の見分け方

局所のトラブルは頻度が高く、放置すると悪化します。
痛みの種類や皮膚の色、温度、腫れ方が見分けの手がかりです。
判断に迷う際は動かさずにナースコールを押してください。
痛みの種類で分かるリスク
ズキズキする持続痛や、焼けるような痛みは血管外漏出の可能性があります。
刺すような鋭い痛みが注入に一致して増す場合も要注意です。
鈍いだるさのみで、体勢を整えると改善するなら体位の影響かもしれませんが、繰り返す場合は相談が必要です。
腫脹・発赤・冷感と血管外漏出のサイン
急な腫れ、皮膚の緊張、光沢、冷たさや白色化は浸潤の所見です。
発赤と熱感が強ければ炎症が進んでいる可能性があります。
薬剤によっては組織障害が起こり得るため、揉んだり温めたりせずにコールしてください。
血管炎や静脈痛が疑われるとき
穿刺部から血管の走行に沿って赤い筋が出る、触ると痛い、熱っぽい場合は血管炎の可能性があります。
早めに評価し、固定の見直しや部位変更、鎮痛などで対応します。
テープかぶれ・出血・固定のゆるみ
かゆみ、水疱、かさつきなどは皮膚刺激のサインです。
出血や固定のずれは感染や抜去のリスクになるため、触らずにコールしてください。
皮膚が弱い方は事前にテープの苦手を伝えると代替資材で対応できます。
気分不良やアレルギーなど全身症状のサイン

全身の変化は早期対応が鍵です。
薬剤反応や循環動態の変化が背景にあることがあり、迅速な評価が必要です。
悪寒・発熱・震え
急な悪寒や発熱は感染や輸液反応の可能性があります。
シーツをかけるなどの対応は看護師到着後で十分です。
無理に体を温めすぎる必要はありません。
息苦しさ・喉の違和感・声のかすれ
アレルギー反応の初期サインとして重要です。
横になったまま安静を保ち、枕の高さは変えずにコールしてください。
自己判断で点滴の操作は行わないでください。
めまい・ふらつき・意識が遠のく感じ
血圧低下や不整脈、低血糖などの可能性があります。
立ち上がらず、その場でコールしてください。
付き添いの方は無理に歩かせず、側で見守ってください。
発疹・かゆみ・顔の紅潮
軽度でも薬剤性の可能性があるため、必ず報告を。
爪で掻かず、患部を露出させすぎないようにして待機します。
吐き気・嘔吐・腹痛
抗がん薬や抗菌薬などでみられることがあります。
嘔吐が迫る場合は体を横向きにして誤嚥を予防し、すぐにコールしてください。
点滴スピードとアラームの見方・伝え方
点滴ポンプや滴下筒の異常は安全装置が検知して知らせます。
アラームが鳴ったときは、患者さん自身で操作せず、状況を伝えることが大切です。
よくあるアラームの種類
閉塞、気泡、針落ち、ドア開放、終了の通知などがあります。
表示は機種で異なるため、見えた言葉をそのまま伝えてください。
音量が気になる場合もコールでお伝えください。
滴下が止まるときの原因と体位調整
肘関節の屈曲、腕枕の圧迫、体位変換で一時的に止まることがあります。
腕を真っすぐ伸ばし、穿刺部を心臓より少し高く保つと改善する場合があります。
改善しない、痛みを伴う場合は動かさずにコールしてください。
スピード変更の可否と依頼の仕方
点滴速度は医師指示に基づくため、自己判断で変更はできません。
尿量が少ない、むくむ、動悸がするなど気になる変化は速やかにコールして相談してください。
夜間でも遠慮は不要です。
夜間のアラームや音への配慮
眠りを妨げる場合は個別に調整します。
枕元の位置や固定の見直しなどで改善できることがありますので、我慢せずにお知らせください。
ナースコールを押す前後の安全な対処手順

押す前に無理な操作をしないことが最優先です。
押した後は到着まで安全を確保しましょう。
短いフレーズで伝えるコツも紹介します。
押す前にやってはいけないこと
ポンプやクレンメの操作、針やテープを外す、揉む・温める・冷やすなどの処置。
これらは状況を悪化させる可能性があるため避けてください。
止血や圧迫が必要そうに見えても、まずはコールが安全です。
到着までの姿勢と腕の扱い
穿刺側の腕は動かさず、肘を伸ばして安静を保ちます。
ベッド柵につかまって体を起こすのは避け、転倒に注意してください。
嘔気が強い場合は横向きで待機します。
用事やトイレ移動が必要なとき
点滴中の移動は転倒や抜針のリスクがあります。
必ずコールして介助を受けてください。
点滴スタンドの操作はスタッフが行います。
伝え方のテンプレート
- 部位と症状の強さ例:右腕の点滴がズキズキ痛い、10分前から
- 見た目の変化例:赤く腫れて冷たい、血が逆流している
- 全身症状例:息苦しい、めまい、吐き気
- 機械の情報例:ポンプが閉塞と表示して鳴っている
対象別の注意点とよくあるケース
年齢や治療背景によって注意点は変わります。
特性に合わせた観察ポイントを押さえておくと、安全性が高まります。
小児の点滴での観察ポイント
痛みを言語化できない場合があり、泣き方や手を振り払う動作がサインになります。
固定を触り続ける、いつもと違う元気のなさがあればコールしてください。
保護者は無理に抑えず、看護師と連携して姿勢を整えましょう。
高齢者・皮膚が弱い方への配慮
皮膚脆弱でテープトラブルが出やすいです。
軽い痒み段階で早めに伝えると資材変更で予防できます。
認知機能低下がある場合はミトンや保護カバーの使用を検討します。
中心静脈カテーテルやポートの場合
発熱、悪寒、刺入部の発赤・浸出、新規の胸痛や咳は要注意です。
ドレッシングの湿り、浮き、チューブの引き抜け感があれば即時にコールしてください。
自己消毒や貼り替えは行わないでください。
在宅点滴の場合の連絡手順
在宅ではナースコールがないため、事前に共有された連絡先に電話してください。
息苦しさ、強い腫脹、意識障害などの緊急症状は救急要請を検討します。
針が抜けた、ポンプが止まったなども自己判断せず連絡が安全です。
緊急度の目安が一目で分かる比較
呼ぶべき場面と、短時間の様子見が許容される場面を整理します。
迷う場合はコールを優先してください。
| すぐナースコール | 短時間の様子見可 |
|---|---|
| 強い痛み、急な腫れや冷感、色の変化 | 体位を伸ばすと痛みがすぐ軽快 |
| 息苦しさ、喉の違和感、全身のじんま疹 | 軽いむずむずや一過性の紅潮 |
| 悪寒・発熱、めまい、意識が遠のく | 立ちくらみ様で横になると改善 |
| ポンプの持続アラーム、血液逆流 | 一瞬のアラームで直後に解消 |
よくあるQ&A
臨床で多い質問に簡潔に答えます。
不安が解消しない時はいつでもコールしてください。
点滴中に寝てもいいですか
眠って構いません。
体位で滴下が止まる場合があるため、アラームが鳴ったら呼んでください。
食事や水分はとってもいいですか
絶食指示がなければ通常は可能です。
吐き気がある場合は少量から再開し、症状が悪化すればコールしてください。
トイレはどうしたらいいですか
転倒防止と抜針予防のため、移動前に必ずコールしてください。
夜間も遠慮は不要です。
手がしびれる・冷たい感じがします
血流や位置の影響、浸潤の可能性があります。
腕を動かさずにコールして評価を受けてください。
点滴に空気が見えます
装置には空気検知があり、通常は安全に設計されています。
見えた時は自己処置せず、コールで確認を依頼してください。
針が抜けたかも
手で押さえたり戻そうとせず、動かないでコールしてください。
出血が多ければ近くのガーゼで軽く抑えるまでで十分です。
何回も呼ぶのは申し訳ない
安全のためのナースコールです。
遠慮は不要で、早く知らせていただくほど合併症を防げます。
まとめ
点滴のナースコールのタイミングは、局所の強い痛みや腫れ、色や温度の変化、息苦しさや発疹などの全身症状、機器アラームや滴下停止が目安です。
操作や自己処置は行わず、迷ったら押すが基本です。
押した後は腕を安静に保ち、簡潔に症状を伝えると対応が迅速になります。
小児や高齢者、中心静脈カテーテル、在宅など背景に応じてサインは変化します。
不安があれば早めに共有し、転倒や抜針を防ぐ行動を取りましょう。
本記事のポイントを参考に、安心して治療を受けてください。
最新情報です。必要に応じて病院のルールや指示に従って運用してください。