心身の不調や家族の事情などで、今のまま働き続けるのがつらいと感じても、看護師が実際に休職に踏み切るのは簡単ではありません。
どのような理由なら休職できるのか、職場にはどう伝えればよいのか、手当はもらえるのかなど、不安や疑問が多くて当然です。
この記事では、看護師が休職を考える場面で役立つように、よくある休職理由と、申請から復職までの具体的な流れを専門的に整理しました。
できるだけトラブルを避け、あなたの権利を守りながら、適切に休職するためのポイントをわかりやすく解説します。
目次
看護師 休職 理由 流れをまず整理する
看護師が休職を検討する際には、そもそも休職とは何か、どのような理由で認められやすいのか、どのような流れで手続きを進めるのかを全体像として把握しておくことが大切です。
特に医療機関では、就業規則や病院の規模、雇用形態によって休職の扱いが異なりますので、自分の状況に照らして理解しておく必要があります。
また、休職は解雇でも退職でもなく、あくまで雇用関係を維持したまま一時的に働くことを休む制度です。
そのため、適切な理由と手続きを踏めば、職場や上司との関係を悪化させずに心身を休めることができます。この記事では、看護師に多い休職理由と手続きの基本的な流れを、できるだけ具体的に説明します。
休職と退職の違いとは
休職は、雇用契約を維持したまま、一定期間就労義務を免除される状態を指します。
一方、退職は雇用契約そのものを終了させる行為ですので、復職を前提としていない点が大きな違いです。休職中は、就業規則に定める期間を上限として、復職を目指して療養や環境調整を行うことになります。
多くの医療機関では、傷病やメンタル不調などやむを得ない事情に限り休職が認められますが、私的な理由や人間関係の不満だけでは認められにくい場合があります。
退職の場合は理由の制限は弱いものの、職場復帰の権利はなくなるため、どちらを選択するかは慎重に検討する必要があります。
看護師が休職を考え始める典型的な場面
看護師が休職を検討する場面として多いのは、心身の不調が長引き、日常生活にも支障が出始めたタイミングです。
例えば、夜眠れない、動悸や息苦しさが続く、職場に行こうとすると涙が止まらないなど、明らかなストレス反応が出ているケースが典型的です。
また、家族の介護が急に必要になったり、妊娠から出産にかけて体調が不安定になったりしたことで、今まで通り夜勤や残業をこなすのが難しくなることもあります。
さらには、医療事故やインシデントをきっかけに強い自責感や恐怖に襲われ、現場に立つのが怖くなってしまう場合もあり、こうした状況では無理を続けるより、休職を選ぶ方が望ましいことも少なくありません。
休職の流れを俯瞰して不安を減らす
休職には、申し出から復職までおおよそ共通する一連の流れがあります。
まずは主治医を受診して診断書を準備し、上司や人事担当者に相談・申請を行います。その後、就業規則に沿って休職が決定され、必要に応じて傷病手当金の申請など経済的な手続きを行いながら療養に専念します。
復職の際には、再度診断書の提出や復職判定面談が行われ、配置や勤務形態を含めた復帰プランを検討することが一般的です。
この全体像を事前に把握しておくことで、いつ何をするべきなのかが見えやすくなり、不安を和らげることができます。次の章から、具体的な理由ごとのポイントを詳しく見ていきます。
看護師が休職する主な理由と特徴

看護師の休職理由には、身体疾患、メンタルヘルス不調、妊娠・出産・育児、家族の介護などいくつかの典型パターンがあります。
それぞれで必要な手続きや準備、周囲への説明の仕方が異なるため、自分の状況がどのパターンに近いのかを整理しておくと、休職の検討がスムーズになります。
また、表向きの理由と本音の理由が異なることも珍しくありません。例えば、人間関係や過重労働が背景にありつつも、診断名としては適応障害やうつ病として休職するケースがあります。
ここでは、代表的な休職理由と、それぞれの特徴や注意点を解説します。
メンタル不調(うつ病・適応障害・燃え尽き)の場合
看護師の休職理由として最も多いのが、うつ病や適応障害、不安障害などのメンタル不調です。
業務負担の大きさ、患者対応の緊張、医療安全へのプレッシャー、人間関係のストレスなどが重なり、気力の低下や不眠、食欲不振などの症状が慢性的に続くと、業務継続が困難になります。
メンタル不調の場合、産業医や精神科・心療内科での診断が重要です。
適切な診断名と就労制限の内容が診断書に明記されていれば、休職が認められやすくなるだけでなく、復職時の配慮も受けやすくなります。自己判断で無理を続けるより、早めに専門医に相談し、必要に応じて休職を選択することが、長期的なキャリアを守るうえで有効です。
身体疾患やケガによる休職
腰痛や頚椎症などの整形外科疾患、持病の悪化、手術後の療養、感染症など、身体的な理由で休職が必要となる看護師も多くいます。
特に、患者の移乗や体位変換が多い病棟では、慢性的な腰痛からヘルニアに進行し、夜勤や夜間の救急対応が困難になるケースが目立ちます。
身体疾患の場合も、主治医からの診断書が基本となりますが、業務内容との関係性が明確な場合には、労災保険や公務災害の適用が検討されることもあります。
就業規則上の病気休暇や病気休職の規定を確認し、どの制度を利用できるのか、人事労務担当者と具体的に相談しながら進めることが重要です。
妊娠・出産・育児をきっかけとしたケース
妊娠や出産を機に、つわりや切迫流産・早産のリスク、産後うつなどにより、従来のシフト勤務が難しくなることがあります。
この場合、法律に基づく産前産後休業や育児休業が中心となりますが、その前段階として、妊娠悪阻など医師の指示により病気休職を利用することもあります。
法律上、妊娠中および産後1年以内の労働者は、深夜業や時間外労働の制限、軽易業務への転換請求など、さまざまな配慮を受ける権利があります。
しかし、現場では人員配置の都合もあり、希望が十分に反映されないこともあるため、医師の意見書や母性健康管理指導事項連絡カードなどを適切に活用しながら、無理のない働き方や休職を検討することが大切です。
家族の介護・看取りなど家庭の事情
親や配偶者、子どもの介護や長期入院に伴い、夜勤や長時間労働を続けることが難しくなるケースも増えています。
この場合は、介護休業や介護休暇といった法定の制度に加え、就業規則に基づく休職制度を組み合わせて利用することがあります。
介護休業は法律で要件や上限日数が定められており、復職の権利も保護されていますが、経済面の不安が大きく、現実的には短期間しか取得できないこともあります。
そのため、介護サービスの利用や家族での役割分担と並行して、勤務形態の変更や部署異動を含め、長期的な視点でキャリアと家庭の両立を考えることが重要になります。
人間関係・ハラスメントが背景にある場合
表向きの診断名は適応障害やうつ病であっても、実際には上司や先輩との対立、陰湿ないじめ、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントが背景にあることも少なくありません。
このような心理的負荷は、心身の不調を招き、結果として休職に至ることがあります。
ハラスメントが疑われる場合は、職場の相談窓口や産業医、外部の相談機関に早めに相談することが推奨されます。
記録として、発言内容や日時をメモに残しておくことも、後の対応で役立ちます。休職を選ぶ場合でも、復職時に同じ部署へ戻るかどうか、配置転換の希望を出すかなど、将来の働き方を見据えた対応が必要です。
休職の前に確認しておくべき制度と権利

休職を決断する前に、自分がどのような制度や権利を利用できるのかを確認しておくことが重要です。
病院や施設ごとの就業規則の違いに加え、労働基準法や育児・介護休業法、健康保険法など、複数の法律が関係してきます。
また、正職員か非常勤か、勤務先が公立か私立かによっても利用できる制度が異なります。
ここでは、看護師が知っておきたい主な制度と、休職に関係する基本的な権利について整理します。
就業規則と雇用契約書のチェックポイント
まず確認すべきは、勤務先の就業規則と、自分が署名した雇用契約書です。
そこには、病気休職の条件、期間、手当の有無、休職期間満了時の扱いなどが定められています。休職できるのは勤続何年以上からか、最大で何カ月までか、といった具体的な条項を確認しておきましょう。
就業規則の内容が分からない場合は、総務部門や看護部、人事担当者に閲覧を申し出ることができます。
法律上、労働者は就業規則の閲覧が認められているため、遠慮する必要はありません。内容を把握したうえで、どのタイミングで休職すべきか、復職のメドをどう考えるかといった計画を立てることができます。
病気休職制度と有給休暇の関係
多くの医療機関では、病気休職に入る前に、まず有給休暇の消化を求められることがあります。
これは、就業規則上、有給休暇を優先して使用し、その後に無給の病気休職へ移行する運用が一般的だからです。実際の運用は職場によって異なるため、担当部署に確認が必要です。
有給休暇をどの程度残しておくかは悩ましい問題ですが、長期の療養が見込まれる場合は、初期の収入を確保するために計画的に使用することも検討します。
また、年次有給休暇には時効がありますので、長期間退職や復職を繰り返す場合は、どの時点で消失するのかも把握しておくと安心です。
傷病手当金・休職中の収入確保
休職期間中の生活を支える重要な制度が、健康保険の傷病手当金です。
これは、業務外の病気やケガで連続して一定期間以上働けなくなった場合、標準報酬日額の3分の2程度が支給される制度です。支給要件や期間には上限がありますが、多くの看護師が利用している制度です。
傷病手当金を受給するには、医師の意見書を含む申請書類が必要であり、勤務先を経由して健康保険組合等に提出します。
また、同時に有給休暇や賃金が支払われている期間は、一部調整が行われることがあります。休職開始前に、人事部門や社労士などに相談し、自分のケースでどの程度の給付が見込めるかを把握しておくと、経済的な不安を軽減できます。
産前産後休業・育児休業との違い
妊娠・出産に関連する休みには、産前産後休業と育児休業があります。
これらは法律で定められた制度であり、申し出により取得でき、通常の病気休職とは異なる扱いとなります。産前6週間、産後8週間の産前産後休業中は原則として就労が禁止されており、その後に育児休業を続けて取得することが可能です。
一方、妊娠中の体調不良などで産前休業前に働けなくなった場合は、病気休職や有給休暇の利用が必要となることがあります。
また、育児休業中には雇用保険から育児休業給付金が支給される可能性があり、病気休職や傷病手当金とは別枠の制度です。それぞれの制度の違いを理解した上で、最も負担の少ない形を選択することが重要です。
法的に守られるポイントと限界
労働者には、解雇制限やハラスメント防止など、法律で守られている権利があります。
特に、病気療養中や妊娠・出産・育児休業中の解雇については、一定の期間について法律で禁止されています。また、心身の状態に応じた合理的配慮を求めることも可能です。
ただし、休職期間が就業規則で定められた上限に達した場合には、自然退職や解雇となる規定を設けている職場も多く、法律上も一定範囲で認められています。
そのため、自分の状態と見込まれる療養期間を踏まえ、必要に応じて転職も選択肢に入れながら、キャリア全体を見据えた判断が求められます。
看護師が休職を申し出る際の具体的な流れ
ここからは、実際に休職を申し出るときの具体的なステップを整理します。
感情的になって勢いで伝えるのではなく、診断書や就業規則の確認など、必要な準備を整えたうえで冷静に進めることが、スムーズな手続きとトラブル回避につながります。
流れをあらかじめ理解しておくことで、「どのタイミングで誰に何を伝えるか」が明確になり、不安を軽減できます。以下のステップを参考に、自分の状況に合わせてアレンジしてください。
ステップ1:まずは医師の受診と診断書の準備
休職を検討するときに最初に行うべきは、医療機関の受診です。
メンタル不調であれば精神科や心療内科、身体疾患であれば該当科を受診し、現在の症状と仕事の状況を具体的に伝えます。診断とともに、就労の可否や制限について医師の判断を仰ぎ、必要であれば診断書の作成を依頼します。
診断書には、病名や症状だけでなく、「一定期間の休職が必要」「夜勤や時間外勤務は不可」など、勤務への具体的な制限が記載されていると望ましいです。
医師には、自分の業務内容やシフト状況を説明し、実際の職場でどのような配慮が必要かを共有しておくと、より実態に即した診断書を作成してもらえます。
ステップ2:直属の上司への相談と伝え方のコツ
診断書の方針が固まったら、次に行うのが職場への相談です。
多くの場合、まずは病棟師長や直属の上司に面談の時間をとってもらい、現在の体調や医師の診断結果を説明します。この際、感情的なやり取りを避け、事実と医師の判断に基づいて話すことが重要です。
伝え方としては、「医師から一定期間の休養が必要と言われたため、就業規則に基づき休職をお願いしたい」といった、落ち着いた表現が望ましいです。
医療現場では人員不足の事情もあり、引き止めや一時的な配置転換の提案が出ることもありますが、自分の心身の状態が限界に近い場合は、無理に応じないことも必要です。可能であれば、信頼できる同僚や産業医にも相談し、支援を得ながら進めるとよいでしょう。
ステップ3:人事・総務との手続きと必要書類
上司への相談後、休職の正式な手続きは人事部門や総務部門が窓口となります。
ここで、休職願や申請書の提出、診断書の提出、休職期間の目安などを確認します。職場によっては、休職開始日や連絡方法、定期的な経過報告の方法なども取り決める場合があります。
あわせて、傷病手当金の申請書類や、健康保険・年金・住民税などの取り扱いについても説明を受けておくと安心です。
提出期限や必要な書類は職場によって異なりますが、遅延があると給付金の支給が遅れたり、手続きが煩雑になったりすることがあります。分からない点はその場で質問し、不明点を残さないようにしましょう。
ステップ4:休職開始後の連絡頻度と過ごし方
休職が始まったら、基本的には療養に専念することが最優先です。
一方で、完全に連絡を断ってしまうのではなく、就業規則や取り決めに沿って、一定の頻度で職場へ経過報告を行うことが求められる場合があります。月に一度の診断書提出や、電話・メールでの近況報告が指定されることもあります。
過ごし方としては、はじめはしっかりと休息を取り、その後、主治医と相談しながら通院・投薬・リハビリ・カウンセリングなどを続けます。
特にメンタル不調では、急いで社会復帰を目指すと再発のリスクが高くなるため、身の回りのことを自分でこなせるようになる、日中安定して活動できるなど、段階的な回復を目標にすることが大切です。
ステップ5:復職前面談から職場復帰まで
復職の目途が立ってきたら、主治医に相談し、就労可能と判断された段階で復職可能の診断書を作成してもらいます。
そのうえで、職場の人事部門や看護部との復職前面談を行い、勤務時間や配属部署、夜勤の可否などを具体的に調整します。多くの職場では、いきなりフルタイムに戻るのではなく、短時間勤務や日勤限定から始めることが推奨されます。
復職後しばらくは、体力やメンタルの負荷に注意しつつ、主治医のフォローアップも続けていきます。
復職判定には産業医が関わることも多く、その場合は職場と医師の橋渡し役として機能します。無理のないペースで復帰できるよう、必要な配慮を具体的に言語化し、合意形成をはかることが大切です。
休職中・復職時にトラブルを防ぐための注意点

休職は心身を守るための大切な手段ですが、進め方を誤ると、職場との関係悪化や手当の支給トラブルにつながることがあります。
ここでは、実務上よく見られる問題点と、それを防ぐためのポイントを解説します。
事前にリスクを把握し、記録の残し方やコミュニケーションの取り方を工夫することで、安心して療養に集中しやすくなります。自分を守るための基本的な視点として押さえておきましょう。
診断書の内容と就業規則のズレに注意
診断書に「休職が望ましい」と書かれていても、就業規則上は有給休暇や短時間勤務の調整から始める運用になっている場合があります。
また、「勤務可能」と記載された診断書が提出された場合、職場側はフルタイム勤務を前提として受けとめることもあり、実際の状態と乖離が生じることがあります。
こうしたズレを防ぐためには、診断書を依頼する際に、職場の勤務実態や就業規則の概要、希望する働き方を医師に説明し、可能な範囲で文面に反映してもらうことが有効です。
例えば、「当面は日勤のみ」「時間外勤務は不可」などの具体的な就労制限があると、職場も配慮しやすくなります。
職場との連絡は記録に残る形で
休職中の連絡方法として、電話だけに頼ると、言った・言わないのトラブルが生じることがあります。
できるだけメールや書面など、記録に残る形でやり取りを行い、重要な取り決めについては保存しておくことが望ましいです。面談の内容も、自分なりにメモを残しておくと安心です。
また、連絡頻度や連絡先については、休職開始時に職場と共通認識を持っておくことが重要です。
体調が悪化して連絡が遅れそうな場合は、家族に代理連絡を依頼する方法などもあらかじめ話し合っておくと、不要な誤解や不信感を避けることができます。
傷病手当金と給与・ボーナスの関係
休職中の収入は、傷病手当金や一部の病気休暇手当など、複数の制度が絡み合うことがあります。
特に、部分的に出勤した場合や有給休暇を組み合わせた場合、支給額の調整が行われることがあり、想定よりも少ない金額になることもあります。
また、賞与や昇給に関しても、休職期間中は算定対象外となる場合が多く、就業規則での扱いを確認しておく必要があります。
不明点があれば、人事部門や社会保険労務士に相談し、自分のケースでどのような影響が出るのかを早めに確認しておくと、生活設計が立てやすくなります。
復職後の働き方調整と再休職リスク
復職後、いきなり元の勤務形態に戻すと、心身の負荷が大きく、短期間で再休職となるリスクが高まります。
特にメンタル不調からの復職では、段階的な勤務時間の延長や業務内容の調整が重要です。主治医や産業医と相談しながら、過重負荷にならない復職プランを作成しましょう。
再休職を防ぐためには、自分のストレスサインを把握し、限界前に相談・調整を行うことも大切です。
必要に応じて、部署異動や勤務形態変更、転職なども選択肢となり得ます。無理をして一度にすべてを取り戻そうとせず、長期的なキャリアを守る視点で働き方を見直すことが求められます。
休職と転職・部署異動をどう考えるか
休職はあくまで「今の職場で働き続けること」を前提にした制度ですが、実際には、復職後に部署異動や転職を検討する看護師も多くいます。
心身の状態や家庭の事情、職場環境などを踏まえ、どの選択肢が自分にとって現実的で、負担が少ないかを検討することが大切です。
ここでは、休職と部署異動・転職の関係や、それぞれのメリット・デメリットを整理し、自分に合った選択を考えるためのポイントを紹介します。
同じ職場での部署異動という選択肢
現在の部署の業務内容や人間関係が大きなストレス要因となっている場合、同じ病院内での部署異動は有力な選択肢になります。
例えば、急性期病棟から回復期病棟、外来、健診センター、訪問看護部門などへ移ることで、業務負荷や夜勤の有無、人間関係の構造が大きく変わる可能性があります。
部署異動の希望は、復職前面談や人事面談の場で具体的に伝えることが大切です。
診断書に「業務内容の軽減が必要」などの記載があると、異動の必要性が伝わりやすくなります。ただし、病院側にも人員配置の都合があるため、希望が必ずしもすべて通るわけではありません。代替案として勤務形態の変更や業務内容の調整などを提案されることもあります。
休職から転職に切り替えるタイミング
職場環境の問題が大きく、同じ組織内で改善が見込めないと判断される場合、休職期間中または復職後のある時点で、転職を検討することがあります。
特に、ハラスメントや組織風土といった構造的な問題が背景にある場合、部署異動だけでは根本的な解決にならないこともあります。
転職のタイミングとしては、心身の状態がある程度回復し、日常生活が安定して送れるようになってからが望ましいです。
そのうえで、自分の適性や希望する働き方を整理し、転職先の業務内容や働き方、支援体制を慎重に確認します。焦って決めてしまうと、再び同じ問題を抱える職場を選んでしまう危険があるため、じっくり情報収集を行うことが重要です。
自分に合う働き方を見つけるための視点
休職をきっかけに、自分にとって無理のない働き方やキャリアの方向性を見直す看護師は少なくありません。
「夜勤の少ない働き方」「少人数でじっくり関わる看護」「教育や相談支援に重きを置く仕事」など、自分の価値観や得意分野に合ったフィールドを検討することが大切です。
具体的には、病院以外にも、クリニック、訪問看護、企業の健康管理部門、行政機関、学校・保育園など、看護師の活躍の場は多岐にわたります。
また、フルタイムにこだわらず、非常勤や短時間勤務など柔軟な働き方も選択肢に入ります。休職中はつらい時期ですが、長い目で見れば、自分に合ったキャリアを再構築する貴重な転機となり得ます。
まとめ
看護師が休職を考える背景には、メンタル不調、身体疾患、妊娠・出産・育児、家族の介護、人間関係など、さまざまな事情があります。
いずれの場合も、まずは医師の診断を受け、就業規則と利用可能な制度を確認したうえで、上司や人事担当者に冷静に相談することが重要です。
休職は、キャリアを終わらせるためのものではなく、今後も看護師として働き続けるために心身を整える期間です。
適切な手続きと制度の活用により、経済的な不安を軽減しつつ、療養に専念することができます。復職時には、勤務形態や部署異動、場合によっては転職も含め、自分にとって無理のない働き方を模索することが大切です。
つらい状況の中で休職を決断するのは勇気がいることですが、決して一人で抱え込む必要はありません。
医師、産業医、人事部門、家族や友人、専門家など、利用できるサポートを積極的に活用しながら、あなた自身の健康と人生を守る選択をしていただければと思います。