お局看護師からの理不尽ないじめに悩んでいる看護師は少なくありません。特に新人看護師はターゲットになりやすく、毎日ストレスを抱えてしまうこともあります。この問題は決して個人の能力不足ではなく、看護現場における上司と部下の力関係が影響しています。
この記事では、お局看護師によるいじめの実態と原因、さらに具体的な対処法を専門的な視点で詳しく解説します。適切な相談窓口や必要に応じたキャリア選択も含め、2025年最新の情報をもとに看護師の皆さんが安全に働くために知っておくべきポイントをまとめています。
目次
看護師がお局看護師から受けるいじめとは？
看護師における「お局」とは、長年同じ職場で幅を利かせてきた年配のベテラン看護師を指します。お局看護師は新人や後輩看護師に対し、業務とは無関係な嫌味や過度な叱責などのいじめ行為を行うことがあります。実際に看護師の最新調査では、看護師の約65%が職場で何らかのハラスメントを「受けたことがある」と回答しており、その中でも「上司（約70%）」「先輩・ベテラン看護師（約40%）」からのハラスメントが目立っていました。この結果からも、お局看護師からのいじめが看護現場の深刻な問題であることがわかります。
お局看護師からのいじめは、単なる指導や研修の範囲を超えた不当な行為です。仕事のミスや提案に対し人格を否定するような罵倒を受けたり、根拠なく業務を持ち回されたりすることが典型的です。指導であれば正しい業務遂行を支援する目的がありますが、お局看護師によるいじめの場合、受け手が精神的に追い詰められたり、職場環境が悪化する点が大きな違いです。以下のような行為は明らかないじめの一例といえます。
お局看護師とはどんな人？
- 長年にわたり同じ病棟で働いていて、職場の空気を仕切っている
- 自らを看護部の規範と考え、新人に厳格な態度を取る
- 必要以上に細かいルールを課し、先輩であることを武器にする
- 表向きは優しくても、裏では意地悪をしている二面性
「お局（おつぼね）」という言葉は古くから、社内で権限を持つ年配女性を指す敬称でした。看護職で使われる際は、こうした権威的な振る舞いをするベテラン看護師のことを指し、「お局看護師」と呼ぶことが多いです。
お局からのいじめ行為の特徴
- 挨拶を無視したり、仕事で自分だけを冷遇する
- 陰口を言ったり、他人のミスをしつこく指摘して責め立てる
- 公開の場で叱責し、他の看護師の前で恥をかかせる
- 業務配分を偏らせ、雑用や夜勤の単独担当など負担の大きい仕事を押し付ける
- 評価を主導し、常に後輩をプレッシャーにさらす
例えば、新人看護師がミスした際に必要以上に叱責したり、「そんなことも知らないの？」と人格否定に近い言い方をするのが典型的です。また、挨拶を交わしても無視したり、雑談の輪に入れてくれないといった小さないじめも含まれます。このような行為を重ねられると、看護師は精神的に疲弊し、職場に居づらさを感じるようになります。
指導との違いは？
職場の指導には、ミスを正したり看護技術を高める目的があります。それに対し、「いじめ」は指導とは目的や手法が異なります。指導であれば相手の成長を願い、適切なフィードバックが行われるべきです。しかしお局看護師からのいじめの場合、受け手の成長よりも自分の立場を守ることが優先されがちです。
具体的には、指導では正確な情報や改善点を伝えて学びにつなげますが、お局看護師のいじめはミスをあげつらって弱らせたり、些細な言動で怒鳴り散らしたりする傾向があります。叱咤激励とは異なり、相手が疲弊し自己肯定感を失うような言動は明らかなパワーハラスメントといえるでしょう。
お局看護師がいじめを行う原因と背景
お局看護師がいじめを行う背景には、看護職特有の職場環境や個人的要因が複雑に絡んでいます。まず看護職は夜勤・長時間労働が多く、人手不足で慢性的な負荷がかかる職場です。そうした中で長年やってきたお局看護師は、昔の厳しい指導環境を生き抜いてきた経験から「新人にもそれくらいできて当然」という考えを抱くことがあります。
また、多くの場合お局看護師は自分の存在価値を認めてほしいという承認欲求を持っています。仕事量をきちんとこなすベテランとして評価されたいと思うあまり、後輩がミスをすると強く叱責して自分の優位性を誇示しようとするのです。さらに、教育能力が十分でない場合もあります。適切な指導法を学ぶ機会がなく、感情的に叱ることが習慣化してしまっているケースです。
- 過去の教育体験：新人時代に厳しい指導を受けており、自分も同じように接する
- 承認欲求：自分が先輩・ベテランであることを誇示するために後輩を試す
- 職場環境のストレス：長年の労働負荷や人間関係に不満がたまり、弱い立場にあたる
- 指導スキルの不足：良い教育方法がわからず、怒るしか手段がない
このような要因が重なると、いじめ行為が起こりやすい状況が生まれます。看護業界は上下関係が厳しい職場でもあり、先輩が後輩に厳しい態度をとってもそれを受け入れざるを得ない空気も存在します。お局看護師は昔ながらの職場文化を背景に行動していることが多いため、これらの文化的要素もいじめを助長してしまう要因です。
お局看護師にいじめられた看護師の心と体への影響
お局看護師から長期間にわたりいじめを受けると、看護師側にも大きなストレス負荷がかかります。心理面ではうつ状態や不安障害を引き起こしやすくなり、自分に自信が持てなくなったり、仕事が怖くなるケースがあります。心身の変調は決して軽視できず、最悪の場合はうつ病と診断されることもあります。
身体面でも影響が出ることがあります。腹痛や頭痛、不眠など、ストレス性の不調が現れることが少なくありません。特に夜勤の多い看護現場では、睡眠不足や交代勤務による体調不良が重なり、精神的な追い詰めが身体症状として表れやすいのです。
- 情緒不安定：憂うつ感や無力感、強い不安感に悩まされる
- 自信喪失：仕事に対する意欲が低下し、連携ミスや学びの阻害が生じる
- 身体症状：頭痛、腹痛、食欲不振、不眠などの不調が続く
- 離職の増加：職場に居辛くなり、退職や配置転換を真剣に考えるようになる
- 人間関係悪化：他の看護師との信頼関係にひびが入り、チームワークが乱れる
実際に看護師の離職理由の調査でも、「職場環境の悪化」が大きな要因として挙げられています。お局看護師からのいじめは、新人看護師が早期離職する一因になる深刻な問題です。早い段階で対処しなければ、精神的・身体的ダメージは回復に時間がかかるだけでなく、長い看護師人生に大きな影響を及ぼしかねません。
お局看護師からのいじめへの対処法
お局看護師によるいじめに対しては、冷静な対応が求められます。まずは相手の言動に感情的に反応せず、次のようなステップで対策を講じましょう。
相手の心理を理解し、柔軟に対応する
お局看護師は自分の立場を守りたいという思いから厳しく振る舞うことが多いです。まずは彼女たちの心理を理解し、過度にケンカ腰にならないよう心がけましょう。例えば、指示を仰いだ際には「はい、教えていただきありがとうございます」と謙虚に答え、与えられた業務を確実にこなす姿勢を見せます。感謝の態度を示すことで、お局看護師の承認欲求を満たし、攻撃の対象になりにくくなります。
また、指導や指摘を受けた際は防衛的にならず、聞き返して納得しながら進めることが大切です。細かいミスを指摘された場合でも、落ち着いて「すみません、以降気をつけます」と謝罪し、改善点を確認しましょう。このように相手のペースに合わせて誠実に対応することで、いじめの激化を防げる場合があります。
同僚と連携して支え合う
一人だけで悩まず、同じ職場の看護師や同期と連携しましょう。同じようにお局看護師に悩む職員がいれば情報共有を行い、複数人でチームとして協力することで一人にかかる負担を軽減できます。ただし、愚痴を言う際は上司やお局看護師に筒抜けにならないよう、信頼できる相手にとどめることが重要です。
- 先輩や同僚に悩みを打ち明けて精神的負担を軽くする
- 業務分担の偏りに気づいたら、同僚と協力して改善策を検討する
- グループで協力してお局看護師と距離を保ち、個人攻撃を受けにくくする
複数人で声を合わせることで、上司も異常事態に気づくきっかけになります。ただし、相談内容が噂にならないよう細心の注意を払いましょう。また、同僚に愚痴るだけでなく、「ハラスメント」に詳しい外部の知り合いやSNSコミュニティで情報収集するのも精神衛生上役立つことがあります。
上司や相談窓口に報告・相談する
自分だけで対処しきれない場合は、必ず上司に相談しましょう。看護師長や病棟師長など責任者に客観的事実を伝え、解決の場を設けてもらうよう依頼します。相談時は、冷静にメモを取っておくことが有効です。具体的な日時・場所・発言内容などを記録し、「いつ、どこで、何をされたか」がわかる形で上司に提出できれば状況が伝わりやすくなります。
病院には通常、労務課やハラスメント相談窓口が設置されています。医療現場のハラスメント対策は年々強化されており、城病院など大規模施設では相談窓口の整備が進んでいます。また、看護師向けには日本看護協会が提供する労働相談窓口やメンタルヘルス相談窓口も利用可能です。厚生労働省の「ハラスメント相談ナビ」や地域の労働局の「総合労働相談コーナー」も役立ちます。
このように、まずは病院内で解決を試み、改善が見られない場合は外部機関の活用を検討します。たとえば、ナースセンター（都道府県の看護協会付属センター）ではキャリア相談を通じて職場ストレスの相談にも応じています。
看護師が利用できる相談窓口と支援
病院内での対応に限界を感じる場合、業界団体や公的機関の支援も利用しましょう。以下のような相談窓口が代表的です。
- 各病院のハラスメント相談窓口：設置が義務付けられている場合が多い
- 日本看護協会の相談サービス：看護職に特化した労働相談窓口やメンタルヘルス相談
- 厚生労働省「ハラスメント相談ナビ」や「こころの耳」：全国の相談機関を検索可能
- 都道府県労働局の総合労働相談コーナー：労働全般の相談を無料で受け付け
- ナースセンター（各県看護協会）：職場選びの相談やキャリアカウンセリング
これらの窓口は無料で利用でき、匿名での相談が可能なものもあります。外部相談であることをお局看護師に知られないよう注意しながら、自分の権利保護の手段として積極的に活用しましょう。
それでも改善しない場合：転職や異動も視野に
あらゆる対応を試しても解決しない場合は、自分の身を守るために転職や部署異動を検討しても良いでしょう。看護師の職場選びでは、人間関係も重要な要素です。他の科や病棟へ異動願いを出せるか上司に相談したり、看護師転職サイトで条件の良い勤務先を探すのも一つの手段です。
転職を躊躇する理由の一つは現状維持の安定感ですが、無理に我慢して働き続けることが体調悪化やキャリアの停滞を招く場合もあります。近年ではクリニック勤務や訪問看護、保育園看護、保健師など、看護師資格を生かした働き方はいくつも提案されています。特に夜勤や人間関係のストレスが苦手なら、そういった選択肢も含めて将来設計を練り直すと良いでしょう。
- 異動願い：まずは病院内で違う科や役割への異動制度を利用する
- 転職エージェント：人間関係の良い職場を求めるならプロに相談
- キャリアチェンジ：保健師、訪問看護、学校看護など働き方の見直し
なお、異動や転職の際は「お局看護師が嫌だから」とだけ伝えるのではなく、「スキルや勤務環境をさらに向上させたい」という前向きな理由づけを用意しておくことで、人間関係のもつれを避けながらキャリアアップできます。
まとめ
お局看護師によるいじめは看護現場に根強く存在する問題ですが、自分一人で抱え込む必要はありません。まずは相手の心理を理解しつつ距離を置くなど穏便に対処し、職場や業界の相談窓口に相談するなど外部サポートを活用しましょう。ストレスが大きい場合は、転職や異動も選択肢に加えて、自分の安全と健康を最優先に考えてください。
どのような状況であっても、看護師としての誇りを持ち続けるために、適切な対策を取ることが重要です。