看護師が退職を考えると、これまでお世話になった仲間や先輩に気まずいと感じることがあります。しかし、退職は決して悪いことではありません。キャリアとして前向きなステップでもあります。
具体的には「上司にいつ退職を伝えるか」「残りの業務をどう引き継ぐか」など、悩みは尽きないかもしれません。これから退職を控える看護師の方に向けて、少しでも不安を解消し安心して退職準備ができるよう、具体的なポイントを解説していきます。
目次
看護師の退職が気まずいと感じる理由と上手な過ごし方
退職を考え始めると、「仕事を辞めること」に対して罪悪感や不安を抱える看護師も少なくありません。これまで築いてきた人間関係を断つ寂しさや、「自分だけが職場を抜けていいのだろうか」という後ろめたさを感じることがあります。
しかし、退職は本人のキャリア形成や生活環境をよりよくするための前向きな選択でもあります。看護師は職場を変えながら専門性を高めていくケースが多いため、自分に合った道を選ぶことは自然な流れなのです。
この章では、退職にともなう気まずい感情が生まれる背景と、その気持ちを上手に受け止める方法を解説します。
退職に感じる罪悪感と不安
看護師が退職すると、これまで担当していた患者さんや一緒に働く同僚を残していくことへの罪悪感を覚えることがあります。患者さんのケアやチーム医療を大切にしてきたからこそ、「自分だけ逃げ出すのではないか」という気持ちで胸が重くなる場面もあるでしょう。
しかし、その罪悪感はあなた一人の責任ではありません。退職は看護師としての経験を次のステップに生かすための自然な選択です。新しい環境でスキルを磨き、自分に合った職場を見つけることで、キャリアに良い影響を与えられます。
むしろ、退職によって自分自身がリフレッシュし、より高いパフォーマンスを発揮できるようになれば、それは患者さんや職場にとっても良い結果です。罪悪感にとらわれすぎず、「次のステージに進むため」と自分に言い聞かせ、前向きに考えることが大切です。
周囲の反応に対する不安
退職が周囲に知られると、先輩や同僚からの反応が気になるかもしれません。「なぜ辞めるのか」「これからどうするのか」など質問攻めに遭うこともあるでしょう。喜んで送り出してくれる人もいれば、いなくなることに寂しさを感じる人もいます。「引継ぎが大変だ」とため息をつかれる場合もあるでしょう。
これらの反応は、それだけ長い間ともに働いて信頼関係を築いてきた証とも言えますが、最初は気まずく感じることがあるかもしれません。
しかし、必ずしもネガティブな反応ばかりではありません。多くの場合、同僚や上司は退職の報告に対し「新しい場所でも頑張ってね」という励ましの言葉をかけてくれます。周囲の態度が気になるときは、自己犠牲になり過ぎず、丁寧に経緯や感謝の気持ちを伝えることに集中しましょう。
退職はキャリアの前向きな一歩
退職はキャリアのネガティブな出来事ではなく、新しいステップと捉えましょう。看護師は職場を変えることで幅広い経験を積むことができます。新しい病院や診療科へ移ることで、別の観点から看護を学び、スキルを向上させることが可能です。
自分の成長や将来の目標を考えれば、退職は前向きな選択となり得ます。
また、患者さんや同僚にとっても、あなたが無理な環境で頑張り続けるより、新たな環境で活力を取り戻すほうが良い場合があります。あなたが自信を持って新しい仕事に取り組めば、退職後も相手に好印象を残せるでしょう。
退職を報告するタイミングと伝え方

退職の意向を伝えるタイミングや方法に悩む看護師は多いものです。タイミングが早すぎると噂が広がったり、遅すぎると引き継ぎに支障が出たりする場合があります。
ここでは、上司への報告の適切なタイミングや退職願のポイント、同僚への伝え方など、スムーズに退職を報告する方法をお伝えします。
上司への報告:いつ伝えるべき?
退職の意思はできるだけ早めに上司に報告しましょう。組織によってルールは異なりますが、一般的には1ヶ月前を目安に伝えるのがマナーです。法律上は2週間前でも問題ありませんが、看護師の場合はシフト調整や後任探しに十分な時間が必要になることが多いため、余裕をもって1~2ヶ月前に話すのが安心です。
報告は口頭で行うのが基本です。業務が落ち着いたタイミングで師長やリーダーに時間を取ってもらい、退職の意思を直接伝えましょう。
具体的には、忙しい時間帯・急患対応中などは避け、面談の時間を事前に設定しておくと誠意が伝わります。落ち着いた環境で「退職を考えており、●月●日で退職させていただきたい」と率直に切り出しましょう。
退職願の書き方と提出マナー
退職願・退職届は正式な書類ですので、書き方と提出方法にも気をつけましょう。黒いペンで丁寧に手書きし、用紙には宛先(病院名や所属部署)、氏名、日付を記入します。退職理由は詳しく書く必要はなく、「一身上の都合」と記載すれば一般的に受け入れられます。最後に「何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます」など、定型的なお礼の言葉で締めると丁寧な印象です。
書類を提出するときは、まず上司に口頭で報告したうえで手渡しするのが礼儀です。時間帯は朝礼や終業時ではなく、上司が落ち着いているタイミングを選びましょう。
退職願を封筒に入れるか、用紙に直接署名するかは職場の慣例に従います。渡すときには一言「退職願を提出します」と添えてください。
同僚やチームへの報告方法
上司への報告が済んだら、次は同僚やチームメンバーに退職を伝えましょう。普段よく話す仲間には直接会って「お世話になりました、実は退職することになりました」と伝えると丁寧です。可能であれば1人ずつ挨拶し、感謝の気持ちを伝えましょう。
複数人への報告は朝礼やミーティングでまとめて行うこともできますが、その後で個別に声をかけるのを忘れずに。転職先や退職理由を質問されたら、「キャリアアップのため」など簡潔に答えましょう。
もし直接話しにくい場合は、連絡帳やメールでメッセージを送るのも一つの方法です。どの方法でも、明るい言葉で「退職を報告し、一緒に働けて嬉しかった」と伝えるよう心がけると良いでしょう。
退職前にやっておくべき準備と手続き

退職までの期間は、後腐れなく職場を去るための準備を進めます。特に引継ぎと業務整理はしっかり行い、退職日までにスムーズに交代できる状態にしておくことが重要です。
ここでは、引継ぎや必要書類の確認、有給休暇の消化など、退職前にやっておきたいことを具体的に解説します。
引継ぎ業務の整理とマニュアル作成
まずは、退職までに担当してきた業務をひとつずつ整理しましょう。日々のルーティンや特記事項をリストアップし、どのように行っていたかを書き出します。患者ごとの注意点や書類の置き場所、連絡先なども漏れなくメモに残しておくと、後任の負担が軽くなります。
自分用のノートや簡単なマニュアルを作成し、誰が見ても分かるようにまとめておきましょう。
引継ぎ相手が決まっている場合は、実際に一緒に作業しながら説明する機会を設けると確実です。引継ぎは口頭だけでなく、書面や図表を用意して視覚的に説明すると後から見直しやすくなります。疑問点は残さず確認し、後任者が安心して仕事に入れるようにしましょう。
必要書類の確認と手続き
退職にともない、社会保険や税金などの手続きが生じます。健康保険証は退職日までに返却し、退職後は「被保険者資格喪失証明書」などを職場から受け取ります。次の職場が決まっていない場合は、国民健康保険・国民年金への切り替え手続きが必要です。これらの手続きは時期が限られるため、人事や総務で確認しておきましょう。
給与や退職金に関する処理も確認します。未消化の有給休暇があれば使い途を上司と相談し、退職日までに消化するのか買い上げにするのかを決めておくことも大切です。
これら手続きについて不明点があるときは早めに総務や人事に問い合わせましょう。退職日当日に慌てることがないよう、あらかじめ必要書類の準備をしておくと安心です。
有給取得とスケジュール調整
有給休暇が残っている場合は、退職直前に使い切るか調整しましょう。ボーナス支給の前後など、職場の繁忙期を避けて休暇を取ると引継ぎへの影響が小さくなります。まとめて休みを取る場合も、事前に上司とスケジュールを擦り合わせて、業務に支障が出ないよう配慮を。
ただし、ギリギリまで仕事を残しておくと迷惑がかかるため、重要な業務は退職前に終わらせておくのが理想です。
もし退職が決まったことで体調が崩れそうなら、無理せず必要な日に有給を使いましょう。自分が元気で仕事に向かえることが、退職後も周囲への配慮につながります。
円満退職のためのマナーと振る舞い
退職日が近づいてもマナーを大切にすることが、円満退職につながります。最後まで誠実に振舞い、感謝の気持ちを示すことで、良い関係を保ったまま退職できます。
ここでは、退職までの間、周囲に良い印象を残すためのポイントを紹介します。
お世話になった人への感謝の伝え方
退職を報告した後は、お世話になった同僚や先輩には感謝の気持ちを伝えましょう。一番は直接会って一言でも「ありがとうございました」を伝えることです。時間が取れない場合は、朝礼や終業後、メッセージカード・メールで「お世話になりました」と感謝の言葉を伝えても構いません。
特に新人の育成に関わった先輩や、仕事上でよく相談に乗ってくれた同僚には、これまでのサポートへのお礼を具体的に伝えると喜ばれます。
感謝の言葉は簡潔でも十分です。照れ臭いかもしれませんが、「あなたのおかげで成長できました」「一緒に働けて楽しかったです」といったエピソードを添えると、相手の心にも残ります。退職日までに機会があれば直接挨拶しましょう。プライベートの贈り物は必須ではありませんが、気持ちを込めた一言が職場の雰囲気を温かくします。
最後まで責任感を持って仕事に取り組む
退職が決まってからも、仕事への姿勢は変えないようにしましょう。引き継ぎ期間中も含め、普段通り患者ケアや日常業務に全力で取り組むことが大切です。最後の挨拶まで責任感を持って働けば、同僚も安心してあなたを送り出すことができます。
もし退職日付近で気が緩むことがあっても、急な欠勤や遅刻は避けましょう。特に夜勤明けの体調管理には注意し、規則正しい生活を心がけてください。
規則正しい生活で良い印象を維持する
退職前でも体調管理は看護師の重要な仕事です。寝坊や無断欠勤が続くと「辞める気持ちが漏れているのでは」と周囲に不信感を与えてしまいます。最後の1日まで、時計通りに出勤し、夜勤の合間もしっかり睡眠を取りましょう。
これまで通り規則正しい生活を続けることで、信頼感を持ったまま退職の日を迎えられます。
また、退職に伴い大きなストレスを抱えることがありますが、休日はしっかり休むなどリフレッシュを忘れずに。体が資本の仕事ですから、ご自身の健康を第一に考えましょう。
気まずさを感じたときの心構えと対処法

ここまでで準備やマナーについて確認しましたが、退職までの期間には気まずさを感じる瞬間もあるはずです。そんなときは無理に自分を責めるのではなく、心の持ち方や対処法を工夫することがポイントです。
以下に挙げる方法を参考に、前向きに残りの期間を過ごしましょう。
ポジティブな未来をイメージして気持ちを切り替える
退職以降の人生や次の職場での挑戦など、ポジティブな未来を想像しましょう。例えば、退職後の休みや旅行の予定、お世話になった仲間への連絡など、楽しみを思い浮かべると不安が和らぎます。
「もう会わない」ではなく「これからの自分」を意識することで、心の切り替えにつながります。
そして、未来の目標を意識することで「残り●日だけ頑張ろう」という気持ちも生まれます。ポジティブなイメージを持ちながら仕事を進めることで、前向きな姿勢で退職日を迎えられます。
残りの仕事に集中し全力を尽くす
退職以降のことを考えすぎると、不安な気持ちが募ってしまいます。そこで、「今ここで与えられた仕事を全力でこなす」という考え方に切り替えてみましょう。最後の日まで丁寧に仕事に取り組むことで、「辞めてから何をするか」を考えるストレスが減ります。
実際に目の前の業務に集中すると、気まずい時間もあっという間に感じられることが多いものです。業務に没頭すれば、同僚からも「最後まで頑張ってくれている」と認められます。
割り切って考える心構え
「どうせもうすぐ離れる」という考えを持つのも、気持ちを楽にする一つの方法です。退職すれば以前のように毎日顔を合わせるわけではなくなりますから、多少遠慮せずに振る舞ってしまっても構いません。
大切なのは「周りにどう思われるか」ではなく、自分が納得できる形で退職することです。自分の決断に自信を持ち、あまり気負わずに過ごしましょう。
場合によっては、退職してからしばらく連絡を取り合う可能性もあります。円満な関係を保つために、ささいな出来事にこだわらず「ありがとう」と前向きに締めくくる意識を持つと良いでしょう。
辛いときは距離を置く・有給を活用する
どうしても職場にいると気まずいと感じるなら、有給休暇を使うなどして休憩するのも手段の一つです。有給を取って出勤日数を減らせば、気まずさを感じる時間も少なくなります。
ただし、休みを多く取ると引継ぎが滞る場合があるので、あらかじめ上司と相談して調整しましょう。
また、上司や相談しやすい先輩に気持ちを打ち明けるのも良いアイディアです。同じ経験をした先輩からアドバイスをもらったり、心の負担を分かち合ったりすることで不安が和らぎます。退職にあたっては自分の健康も大切にしてください。
まとめ
退職にともなう気まずさは、看護師として真面目に仕事をしてきたからこその悩みです。まずはその気持ちを認めつつ、正直なコミュニケーションと準備で乗り越えましょう。上司や同僚には適切なタイミングで退職を伝え、業務引継ぎを丁寧に行いましょう。退職願の提出や感謝の挨拶を忘れずに、自分のキャリアアップにつながる決断であることを伝えることが円満退社のポイントです。
最後まで責任感を持って仕事を続け、感謝の気持ちを忘れずに伝えれば、自然と周囲もあなたの意志を尊重してくれます。退職後の新たな一歩に向けて、ネガティブな感情を手放し、前向きに進んでいきましょう。
看護師として培った経験は、新たな職場でも必ず役立ちます。残りの時間を大切にし、「気まずい」ではなく「晴れやかな気持ち」で退職日を迎えられるようにしましょう。