看護師は患者の命を支えるやりがいのある職業ですが、同時に長時間労働や高い責任がつきまといます。特に近年は慢性的な人手不足によって業務負担が増加し、夜勤や緊急対応のストレスも深刻です。このような事情から「看護師にならない方がいい」と感じる人も多く、就職前に仕事内容や働き方を知っておくことが重要です。
本記事では2025年の最新情報をもとに、看護師の仕事の厳しさや給料・待遇面、求められる資質などを幅広く解説します。看護師への就職を考える前に知っておきたいポイントを分かりやすくまとめました。
看護師にならない方がいい理由
看護師の仕事は医学的専門知識や高い技術を要するうえ、現場では患者の命に直結するミスが許されません。看護学校で学んだ理想と、実際の働き方のギャップに戸惑う新人も少なくありません。
現役看護師の声や厚生労働省のデータを見ると、看護師は「仕事がきつい」と感じる人が多いことがわかります。とくに現場では、責任の重さや人間関係によるストレス、生活リズムの乱れなどが際立っています。
以下のような要素が「看護師にならない方がいい」と考える理由です。
想像以上に重い仕事の負担
看護師は患者の日常生活ケアから投薬管理、緊急時の救命処置まで幅広い業務をこなします。患者の移動や検査介助、薬剤管理など、体力と集中力が常に求められるため、「思ったよりも重労働だった」と感じる人は多いです。
勤務中は常に気を張り詰めていなければならず、少しのミスも許されない環境です。このような負担を負担に感じやすい人や、体力に自信がない人には非常に厳しい仕事内容です。
不規則な勤務時間と生活への影響
看護師は24時間365日体制の職場で働くため、夜勤や交替制勤務がつきものです。夜勤回数が多いほど生活リズムは不規則になり、十分な睡眠が取りづらくなります。
生活リズムが乱れると、疲労や免疫低下の原因となり、家族や友人との時間も合わせにくくなります。一般的な土日休みの日勤仕事と比べると、家族行事や友人との約束が合わせにくいのも看護師の特有の悩みです。
収入が仕事量に見合わない場面も
看護師の平均年収は約520万円(2024年度調査)とされていますが、超過勤務や責任の重さを考えると「収入と労働量のバランスが取れていない」と感じる人もいます。特に大都市と地方、急性期病院と慢性期病棟では給与水準に大きな差があります。
看護師には夜勤手当や資格手当などがつく場合もありますが、夜勤や残業が多いほど体力が削られる点を納得できない人も少なくありません。他の資格職(医師や薬剤師等)と比べ、一部では看護師の手取りが「割に合わない」と感じる声もあります。
命を預かる責任と高いプレッシャー
看護師は患者の命や健康を直接扱う立場にあり、常に高い責任感が求められます。急変に対応する際の即時判断や、複数の患者を同時に見る必要もあるなど、ミスが許されない緊張感が日常的にあります。
この責任感はやりがいでもありますが、一方で重圧となり、ミスや事故への恐怖から精神的に追い詰められる人もいます。特に新人看護師は教育期間の厳しさも加わり、「自分には荷が重い」と感じやすい時期です。
人間関係・ハラスメントのリスク
医療現場では指導的な立場の人間や先輩との人間関係が複雑になりがちです。上下関係やチームワークの中で摩擦が生じることがあり、パワハラに悩む看護師もいます。また、患者や家族から理不尽な要求や暴言を受けることもあります。
実際に調査によれば、看護師の約9割が職場で何らかのハラスメントを経験しており、うち約半数は相談せずに「泣き寝入り」しているといわれます。このような職場環境が精神的負担となり、退職につながるケースも少なくありません。
看護師の仕事の厳しさ

看護師の現場では、一刻を争う医療行為や複数の患者対応が日常茶飯事です。24時間体制のシフト勤務によって勤務形態が特殊であり、一日の勤務時間が長くなりがちです。以下のような点が看護師の仕事を特に過酷にしています。
24時間体制のシフト勤務
24時間稼働する病院では夜勤・遅番・早番があり、勤務時間は変則的になります。夜勤明けや日中の仮眠時間の確保が難しく、常に体内時計が乱れやすい環境です。
また、救急搬送が入れば深夜であっても出動が必要になるため、急な業務が入りやすいのも特徴です。夜勤勤務が続くと健康を害するリスクもあるため、規則正しい生活を望む人にとっては非常に厳しい勤務形態です。
緊急対応と現場のプレッシャー
看護師は急変対応や緊急処置の支援に常に備えなければなりません。患者のバイタルサイン管理はもちろん、異常時には速やかに医師やチームに情報を伝え、適切な処置につなげる必要があります。
一刻一秒を争う場面では、早い判断と行動が求められるため、常に高い集中力が必要です。このようなプレッシャーから、緊急対応に恐怖心を抱いたり、急な業務にストレスを強く感じる人もいます。
肉体労働と身体的リスク
看護師の仕事には患者介助や清潔ケアなど、肉体労働が伴います。寝たきり患者の移乗介助や入浴介助、体位変換などは力仕事であり、腰痛や肩こりなど身体的な負担が少なくありません。
さらに、看護師は医療器具の扱いや注射、点滴、バイタル測定なども日常業務に含まれ、プロテクトギアを着用して長時間立ち続ける場面もあります。このような身体的ストレスは看護師特有のものであり、体力がない人には耐え難い作業となります。
慢性的な人手不足
日本では地域により看護職員の不足状況が異なりますが、多くの病院で慢性的に人手が足りません。1人の看護師が受け持つ患者数が多くなると、業務量は必然的に増えます。
特にコロナ禍以降は在宅医療の需要も伸び、病院だけでなく訪問看護の現場でも看護師不足が深刻です。人手不足は交代要員の確保を難しくしているため、急な残業や休日出勤が発生しやすく、心身の疲弊につながりやすい状況です。
看護師の給料と待遇

看護師の年収は都道府県や病院の規模、経験年数によって大きく変わります。ここでは一般的な水準と、給料にまつわる注意点を紹介します。
平均年収と基本給
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、2024年度の看護師の平均年収は約519万円です。男女別では男性の方がやや高めですが、大きな差はありません。
看護師は国家資格取得まで数年以上学ぶ必要があり、その専門性を考えれば給与水準は一定以上といえます。しかし、長時間・高負荷の勤務に対して手取りが相応でないと感じる人も多く、業務量と基本給のギャップに不満を感じる例も散見されます。
| 職種 | 平均年収 |
|---|---|
| 看護師 | 約520万円 |
| 薬剤師 | 約600万円 |
| 一般事務職 | 約380万円 |
上表のように看護師の平均年収は他の医療系職種に比べて同程度か少し低めですが、残業手当や夜勤手当がつけば手取りは増えます。ただし、定期昇給は徐々にしか増えませんし、同年代の看護師同士で比べても年収差が生じます。
夜勤手当を含む手当と賞与
看護師の場合、夜勤1回あたり数万~数十万円の手当がつくことが一般的です。病院によっては特殊勤務手当や住宅手当などが上乗せされる場合もあります。賞与は年2回が多いですが、コロナ禍以降に減額傾向の施設もあります。
賞与を含めて「年収」と言いますが実際は月収の12倍とボーナスの合算です。ボーナス割合が大きいと生活費の変動も大きいため、収入の安定性が気になる場合はボーナス支給実績もチェックしたいポイントです。
他業界との賃金比較
同じ年齢層で比較すると、看護師の給与は一般企業の平均年収をやや上回る程度です。ただし、医師や薬剤師などと比べると医療系の中では高いほうではありません。
事業所規模の大きい病院ほど基本給や賞与が高い傾向にあり、都市部の大病院では看護師向けに特別な給料体系を用意している場合もあります。また、地方や小規模施設では給与が低めになることがあり、生活費とのバランスで転職先を選ぶ看護師もいます。
地域・施設での格差
都道府県別に見ると、東京・京阪神など大都市では平均より高い手当がつく傾向があります。逆に地方県では基本給やボーナス率が低めで、人手不足を背景に住宅手当等がないこともあります。
同じ病院でも正職員・契約職員・派遣社員で待遇は異なります。求人票だけでなく勤務先の職員の平均年齢や退職金制度、福利厚生などをしっかり確認しましょう。
看護師が抱えるストレスとメンタル面
看護師の転職希望者や退職者増加の背景には、職場での高いストレスやメンタルヘルスの問題があります。実際、ある調査では看護師の8割以上が日常的に「強いストレス」を感じていると答えています。看護師のメンタル面で考慮すべき点を見てみましょう。
職場のハラスメント・人間関係
医療現場では厳格な上下関係があり、上司や先輩からの叱責、派閥的な人間関係に悩む看護師もいます。さらにパワハラだけでなく、同僚間での嫉妬や情報共有不足によるトラブルも起こり得ます。
患者やその家族からの暴言やセクハラも深刻です。例えば、認知症患者の暴力、家族からのクレームなど、看護師自身のケアでは対応困難なケースもあります。こうした人間関係のトラブルは精神的に大きな負担となり、職場離脱の原因にもなっています。
- 上司や先輩からの叱責・威圧
- 同僚とのコミュニケーション不足
- 患者・家族からの暴言・暴力
- 休暇取得への圧力
患者や家族からの心理的負担
看護師は患者の心情にも配慮しながらケアを行わねばなりません。しかし、病気の痛みや不安から患者さんや家族が当たり散らすこともあります。「看護師なら我慢しなさい」という風潮で対策が不十分な場合、受けたストレスを抱え込んでしまいます。
また、命と向き合う中で悲しい出来事(患者の急変や死亡)を経験することもあります。こうした瞬間には深い心的ショックを受けることがあり、トラウマになるケースもあります。メンタルケアのサポート体制がない職場では、看護師の心身の健康が損なわれがちです。
バーンアウトと休職率
長期間過度のストレスにさらされると「バーンアウト(燃え尽き症候群)」に陥る危険があります。現場では心身の疲労から動けなくなり、一時休職や退職届を出す看護師の姿も少なくありません。日本看護協会の調査では、新卒看護師の離職率が10%を超えるというデータもあり、入職1年目でドロップアウトする人もいます。
バーンアウトになると、いったん燃え尽きてしまった後の回復には時間がかかります。長期的に看護職を続けるためには、早い段階で「自分にはこれが辛い要因だ」と気づき、対策を講じることが重要です。
メンタルヘルスケアの必要性
看護師はメンタルケアを怠ると離職につながるケースが多い職種です。非常勤やナースヘルプ(業務補助)で経験を積む方法や、勤務先で相談窓口や研修を利用するなど心のケアをサポートする制度もあります。現場でしんどさを感じたら相談窓口や産業保健スタッフに早めに連絡することが推奨されています。
また、メンタルヘルス対策として定期的に休日を確保し、オンとオフを切り替える工夫も大切です。サポートが充分でない職場にこだわらず、転職して環境を変える選択肢もあります。
看護師に向いていない人の特徴

誰しも向き不向きがありますが、特に看護師として仕事が辛いと感じやすい人には共通した特徴があります。
体力・忍耐力に自信がない人
看護師は夜勤を含む長時間勤務や体力が必要な場面が多いため、体力面で不安がある人には厳しい職業です。例えば、何時間も立ちっぱなしで働いたり、寝ながら補助が必要な患者を移動させたりする作業は体力を消耗します。
また、体力だけでなく精神的な忍耐力も重要です。緊急時の対応や夜勤の孤独感などに耐えられない人は、看護師の業務でストレスを感じやすくなります。
対人コミュニケーションが苦手な人
看護師は患者やその家族、医師や他の看護師など、多くの人と関わりながらチームで仕事を進めます。とくに患者には病状や痛みで感情的になっている人が多く、言葉以上の気遣いや傾聴が必要です。
コミュニケーションに苦手意識があると、信頼関係を築くのに苦労して患者さんの情報を聞き出せない場面が出てきます。医師との情報共有や引き継ぎもうまくいかないと、チーム医療に支障が出てしまいます。
生理的な業務に抵抗がある人
看護師の仕事には、排泄物の処理や清拭(体を拭く作業)など、生理的なケアも含まれます。こうした業務は衛生面で重要ですが、汚れや匂いに抵抗がある人には精神的な負担が大きいものです。
抵抗感を抱えて業務をする際には時間がかかったり、健康管理がおろそかになる恐れがあります。排泄ケアなどを仕事と割り切れない人はストレスが上積みになり、業務継続が難しい可能性が高くなります。
規則正しい生活を望む人
先述のように看護師は夜勤シフトや緊急対応で生活リズムが狂います。「毎日決まった時間に寝起きしたい」「毎週土日休みで過ごしたい」といったライフスタイルを最重視する人には看護師は向いていません。
看護師で成功している人は、不規則な生活にもある程度慣れて自己管理できる人です。生活の安定を第一に考える人は、他の職業と比較検討したほうが無難です。
看護師になる前に確認すべきこと
上記のように看護師は体力・精神力や人間力を求められ、決して楽な仕事ではありません。就職前に以下の点を確認しておくと、自分に合った進路選択がしやすくなります。
看護師の実際の業務内容を調べる
学校やネット情報だけでなく、実際の病院で働く看護師の話を聞いてみましょう。リアルな日常業務の内容やスケジュール、残業の実態などを知ることで、イメージと現実のギャップを埋めることができます。
現場見学やインターンで体験
看護学生のうちに病院見学やインターンシップに参加すると良いでしょう。実際に病棟や外来で看護師の動きを見学したり、研修室で実習したりすることで、自分の適性を判断しやすくなります。
ボランティアで高齢者施設や訪問看護を体験するのも有効です。現場の雰囲気や業務内容に触れることで、「自分には合わない」と感じた場合は進路を再検討する材料になります。
他の医療職との違いを知る
医療業界には看護師以外にも多彩な職種があります。臨床検査技師、薬剤師、介護職、助産師など、専門性や業務内容が異なる職種も候補になるでしょう。自分は人を支える仕事をしたいけれど、このまま看護師しか選択肢がないわけではありません。
他職種の仕事内容や働き方・給料(例:薬剤師は450万円前後、介護職は350万円前後)も調べて、自分の価値観・性格に合うキャリアがないか比較検討してみましょう。
自分の適性や目標を見極める
自分自身の性格や体力、価値観を整理してみましょう。例えば「感情移入しやすい」「学業ストレスに強い」「看護以外のライフプランを優先したい」など、将来的なビジョンと照らし合わせることが大切です。
また、看護師を志す理由が「安定した公務員を目指したい」「患者さんを助けたい」など自分の中で明確であるかも再確認してください。目標と現実のギャップが大きい場合、他の道を検討したほうが人生設計に後悔が少なくなります。
まとめ
看護師は社会に貢献できる魅力的な仕事である一方、長時間労働や高い責任、精神的ストレスなど多くの厳しい現実があります。特に2025年現在は人手不足が続き、忙しさや人間関係の問題が深刻になっています。
就職前には今回紹介したような看護師の厳しい面も踏まえ、ご自身の適性やライフスタイルと照らし合わせてください。もし「これでは続ける自信がない」と感じるなら、他のキャリアや働き方も検討しましょう。
逆に覚悟が持てた方は、看護師としての目標を明確にして準備を進めてください。知識や経験を積めば対処法も身につくため、現場の情報をしっかり確認して納得のいく進路選択をすることが大切です。
いずれにせよ、自分に合った職業選びができるよう、慎重に検討することをおすすめします。