看護師として長く働き続けると、ふと気になるのが定年退職時の退職金です。
40年近く病院やクリニックに貢献してきた結果として、どのくらいの金額を受け取れるのかは、老後の生活設計に直結する重要なテーマです。
本記事では、看護師 退職金 40年というキーワードを切り口に、公立病院と民間病院の違い、企業看護師や訪問看護など勤務先別の相場、計算方法、手取り額の目安まで、専門的な視点で分かりやすく解説します。
あわせて、退職金を最大限に活かすための資産形成の考え方や、今からできる対策も紹介します。
目次
看護師 退職金 40年勤務でいくらもらえるのかの全体像
まずは、看護師が40年勤務した場合、退職金としてどの程度の金額が期待できるのか、全体像から整理します。
退職金の金額は、勤務先の法人形態や規模、退職金規程の有無、勤続年数、最終給与額などによって大きく異なりますが、看護師という職種特有の傾向も存在します。
特に、地方公務員として働く公立病院の看護師と、民間病院やクリニックの看護師では、退職金の水準や計算方法に明確な違いがあります。
ここでは、あくまで一般的なデータや制度をもとにした目安として、公立病院、国立病院機構、大学病院、一般的な民間病院、それ以外の医療関連職場の大まかなレンジを示し、40年勤続時の退職金イメージをつかんでいただきます。
そのうえで、なぜこのような差が生じるのか、どこに就職・転職するかで将来の退職金がどれだけ変わり得るのかを、後続の章で詳しく見ていきます。
40年勤続看護師の退職金相場のざっくりとしたレンジ
看護師の退職金は統一された公的基準があるわけではなく、各法人ごとに就業規則や退職金規程で定められています。
そのため実態はかなり幅がありますが、統計や実務上の水準を踏まえると、以下のようなおおまかなレンジを想定することができます。
- 公立病院・自治体病院:2,000万~2,500万円前後
- 国立病院機構・大学病院:1,500万~2,200万円前後
- 中規模以上の民間病院:1,000万~1,800万円前後
- 中小の民間病院・診療所:退職金なし~1,000万円前後
これらはあくまでモデルケースであり、役職加算や特殊手当の扱い、地域差などでプラスマイナスが生じます。
しかし、40年勤務すると公立系で2,000万円前後、民間では退職金制度の整備状況によって1,000万~2,000万円弱というのが、おおまかな目安と考えて良いでしょう。
退職金額を決める三つの主要な要素
退職金の実額を左右する要素は多岐にわたりますが、中核となるのは次の三つです。
一つ目は勤続年数で、一般に長く勤務するほど支給率が高くなり、看護師のキャリアで40年というのは最も厚い層に入ります。二つ目は最終給与額で、多くの制度が最終基本給に所定の支給率を掛けて算出するため、役職や昇給の状況が大きく影響します。
三つ目は勤務先ごとの退職金制度そのものです。
退職金規程が手厚い公立病院や大規模医療法人と、退職金そのものがない、または一時金がごく少額という小規模クリニックでは、同じ年数・同じ給与水準でも最終的な退職金額はまったく異なります。
この三要素を前提に、自分のキャリアパスをどのように選択するかが、老後の経済的安心に直結してきます。
40年勤続は看護師キャリアでどのくらいの位置づけか
看護師として40年働くというのは、20代前半で就職し、定年までほぼフルに働き抜いた水準です。
実際には、結婚や出産、介護などライフイベントにより離職や長期休職を経験する方も多く、純粋な通算勤続年数が40年に届くケースは決して多数派ではありません。したがって、多くの退職金規程で最も厚い支給率が適用されるゾーンに入るのが、40年付近だと考えられます。
また、病棟師長や看護部長など管理職としての役職を経験している場合、最終給与額が高くなるため、同じ勤続年数の一般看護師と比べて退職金も大きくなります。
40年勤続は身体的にも精神的にも負担の大きい看護職において、一つの到達点といえるため、その対価としての退職金が老後資金の柱になるケースが多いのです。
公立病院と民間病院でどう違う?勤務先別にみる40年退職金の目安

看護師の退職金額を考える際に、最も大きな違いを生むのが勤務先の区分です。
同じ看護師資格を持ち、同じように40年間働いたとしても、公立病院と民間病院では退職金の水準が大きく異なる場合があります。
ここでは、公立病院、国立病院機構、大学病院、一般の民間病院・クリニックといった勤務先ごとに、40年勤続時の退職金の目安や特徴的なポイントを整理します。
また、これらの違いが昇給スピードや賞与、福利厚生全体の設計とも関係している点にも触れ、退職金だけでなくトータルの生涯賃金という観点からも、勤務先選びの重要性を考えていきます。
具体的な数字はあくまで目安ですが、自身の状況と照らし合わせることで、おおよその位置づけを把握しやすくなります。
公立病院・自治体病院で40年働いた場合の退職金イメージ
公立病院や自治体病院の看護師は、多くの場合地方公務員として扱われ、地方公務員退職手当制度に基づいた退職金を受け取ります。
この制度は全国的に一定の基準があり、勤続年数と退職時の俸給月額に応じた支給率によって金額が算出されます。
勤続40年前後、定年退職、管理職ではない一般職といった前提では、おおよそ2,000万前後の退職金となるケースが多いとされています。
役職に就いていたり、俸給表の上位等級に到達している場合には、2,200万~2,500万円程度になることもあります。
また、公立病院の場合は退職金に加えて共済年金に相当する年金給付も比較的手厚く設計されているため、老後の基本的な生活費については、公的年金と退職金の組み合わせで一定の安心感を得やすいといえます。
国立病院機構・大学病院など大規模法人の水準
国立病院機構や国立大学病院、私立大学病院などの大規模法人に勤務する看護師の退職金は、法人ごとの就業規則に基づきますが、概ね公的機関に近い水準で設計されているケースが多いといえます。
40年勤続、定年退職のモデルケースでは、おおよそ1,500万~2,200万円程度が一つの目安となります。
大学病院は診療や研究機能が高く評価される一方、給与水準が必ずしも高くないケースもあり、最終給与額がそれほど上がらない場合、退職金も抑えめになることがあります。
その一方で、大規模法人では企業年金や確定拠出年金など退職金に付随する制度が整備されていることも多く、トータルでは一定の水準を期待できる点が特徴です。
一般的な民間病院・クリニックの退職金相場
民間病院やクリニックの場合、退職金の制度は病院ごとに大きく異なります。
中規模以上の医療法人では退職金規程が整備され、勤続年数に応じた支給が行われているケースが多い一方で、小規模クリニックでは退職金制度がそもそも存在しない例も珍しくありません。
40年勤務した場合の退職金の目安としては、退職金制度がしっかり整っている医療法人で1,000万~1,800万円程度、簡易的な規程のみの病院で数百万円~1,000万円前後、制度がない場合はゼロという可能性もあります。
民間病院は給与や手当が比較的高い代わりに退職金が薄い、あるいはその逆といったように、報酬体系が多様です。
したがって、就職・転職時には月々の給与だけで判断せず、退職金規程の有無や中身を必ず確認しておくことが、長期的な資産形成の観点からは非常に重要になります。
企業看護師・産業保健師など病院以外の勤務先の場合
病院以外で働く看護師や保健師、たとえば企業の健康管理室、産業保健スタッフ、保険会社の医療職などの場合、退職金は一般企業の制度に準じます。
大企業では退職一時金に加え企業年金や確定拠出年金が整備されていることが多く、40年勤続時には1,500万~2,000万円前後の水準になることも珍しくありません。
一方、中小企業では退職金制度が簡素であったり、制度自体がない場合もあります。
企業看護師・産業保健師として長く働くことを前提にするならば、転職時に労働条件通知書や就業規則を通じて退職金や企業年金制度の内容を確認しておくことが欠かせません。
病院より夜勤が少ないなどワークライフバランスに優れる一方、報酬制度の設計は企業ごとの差が大きい領域です。
退職金の計算方法と40年働いた場合のモデルケース

退職金がどのように計算されるのかを理解しておくと、自身のキャリアプランから将来の受給額をある程度見積もることができます。
看護師の退職金は勤務先ごとに細かいルールが異なりますが、多くの病院や医療法人では、最終基本給と勤続年数を基準にした方式が採用されています。
ここでは、代表的な計算方法と、看護師が40年勤務した場合のモデルケースを用いて、具体的なイメージを持てるよう解説します。
また、退職金が増える働き方と減ってしまう要因、病気休職や産休・育休期間の取り扱いについても簡潔に触れ、実務上気になりやすいポイントを整理します。
実際に自分の職場の規程を確認する際の視点としても役立つ内容です。
一般的な退職金計算式と看護師の位置づけ
一般的な退職金の計算式は、次のような形が多く採用されています。
退職金額 = 退職時の基本給 × 支給率(勤続年数等に応じた係数)
支給率は、例えば勤続20年で15カ月分、30年で25カ月分、40年で35カ月分といったように、勤続年数が長くなるほど逓増する設計が一般的です。看護師の場合もこの枠組みに沿っていることが多く、加えて役職や資格手当の一部が反映されるケースもあります。
支給率表は各法人の退職金規程に明記されており、定年退職か自己都合退職か、懲戒退職かなどの区分によっても異なります。
定年まで勤め上げる場合には最も高い支給率が適用されることが多いため、特に40年近い勤続年数を想定している場合は、途中離職と比べて受け取れる金額に大きな差が生じます。
モデルケース1:公立病院での40年勤続パターン
公立病院で看護師として勤務し、22歳で採用、62歳で定年退職、勤続40年としたモデルケースを考えてみます。
地方公務員の退職手当制度では、退職時の俸給月額と勤続年数をもとに定められた支給率を掛け合わせる方式が採用されており、定年退職かつ長期勤続者には手厚い水準が設定されています。
例えば、退職時俸給月額が35万円、勤続40年に対する支給率が約60~70カ月分と仮定すると、単純計算でおよそ2,100万~2,450万円程度の退職金となります。
実際には地域や号俸、職歴の詳細によって上下しますが、公立病院の看護師がフルキャリアを積んだ場合、2,000万円前後の退職金を受け取るイメージを持つとよいでしょう。
モデルケース2:民間中規模病院での40年勤続パターン
次に、職員数数百人規模の一般的な民間病院で、看護師として40年勤務したケースを考えます。
多くの医療法人では、退職金規程において勤続年数に応じた支給率を定めていますが、公的機関ほど高くない例も少なくありません。例えば、40年勤続に対し30~40カ月分の支給率が設定されていると仮定します。
退職時の基本給が33万円、支給率が35カ月分であれば、退職金は約1,155万円となります。
役職手当の一部が反映される病院であればこれより増えることもありますが、全体としては1,000万~1,500万円前後に収まるケースが多いと想定されます。
一方、退職金制度が簡素な病院では、同じ勤続年数でも数百万円程度にとどまることもあり、勤務先の選択が極めて重要になります。
産休・育休・休職期間は退職金にどう影響するか
看護師は女性比率が高く、産休・育休を取得する方が多い職種です。
一般に、産前産後休業や育児休業期間は、勤続年数に算入される制度が多く、退職金計算上も不利にならないよう配慮されています。ただし、無給期間中は賞与や昇給に影響が出る可能性があり、結果的に最終給与額や退職金にわずかな影響を及ぼすことがあります。
一方、私傷病による長期休職や自己都合による長期休職については、勤続年数に算入されない、または一部のみ算入とされるケースもあります。
自身の病気や家族の介護などで長期離職が想定される場合には、勤務先の就業規則や退職金規程で休職期間の扱いを確認し、将来の退職金にどの程度影響しうるかを把握しておくことが望ましいです。
定年退職と途中退職でどれくらい差が出るのか
同じ看護師でも、定年まで勤務する場合と、60歳前や50代で自己都合退職する場合では、退職金に大きな差が生じます。
多くの退職金制度は、定年退職者を優遇し、自己都合退職者には抑えた支給率を適用する設計になっているためです。
ここでは、40年勤続と30年勤続の比較、定年退職と自己都合退職の違いを具体的なイメージを用いて解説します。
また、第二のキャリアを早めにスタートさせたい看護師が増えている中で、退職金と今後の働き方をどうバランスさせるかという観点も重要になっています。
人生100年時代におけるキャリア設計を考えるうえで、退職金をどこまで重視するかの判断材料となる情報を整理します。
40年勤続と30年勤続では退職金はどれくらい違うか
退職金はおおむね勤続年数に比例して増えますが、その増え方は直線的ではなく、一定の年数を超えると支給率が大きく跳ね上がる設計になっていることが多いです。
例えば、ある病院の支給率表が次のようになっていると仮定します。
30年勤続:支給率24カ月分
40年勤続:支給率35カ月分
退職時基本給が同じ35万円だとすると、30年勤続では約840万円、40年勤続では約1,225万円となり、その差は約385万円です。
公立病院など支給率がより高いところでは、この差が500万~700万円程度になることもあります。
つまり、30年と40年では単に1.3倍ではなく、支給率の段差によって1.5倍以上の差がつくケースもある点を理解しておく必要があります。
定年退職と自己都合退職の支給率の違い
多くの退職金制度では、退職理由によって支給率が変わります。
一般的には、定年退職や会社都合退職では満額の支給率、自己都合退職では一定割合に減額された支給率、懲戒退職では不支給または大幅減額という形です。
看護師が50代で他院へ転職する場合などは、自己都合退職扱いとなり、公立病院では定年時の約7割程度の退職金にとどまるといったケースがあります。
例えば、同じ勤続30年でも、定年退職で支給率24カ月分、自己都合退職で18カ月分に設定されていれば、その差は6カ月分、退職時基本給が35万円なら約210万円の差になります。
転職による給与アップや働きやすさの向上と、この退職金差額をどう天秤にかけるかは、個々人の価値観とライフプラン次第といえるでしょう。
早期退職優遇制度がある場合の考え方
一部の自治体や大規模法人では、一定の年齢や勤続年数を満たした職員を対象に、早期退職優遇制度を設けている場合があります。
これは、定年前に退職する代わりに、上乗せ退職金や再就職支援を提供する制度で、組織の若返りや人件費抑制を目的としています。看護師でも対象になることがあり、制度を利用するかどうか迷うケースも見られます。
優遇制度を利用すれば、同じ勤続年数で通常の自己都合退職より多くの退職金を受け取れる可能性がありますが、その後の収入見通しや再就職の難易度、社会保険の取り扱いなども含めて総合的に判断する必要があります。
特に、退職金を一時的な大金としてではなく、老後資金の一部として長期的にどう活用するかという視点が重要です。
退職金に関する税金と手取り額のイメージ

退職金は原則として所得税の課税対象ですが、勤続年数に応じた大きな控除が設けられており、他の給与所得に比べて税負担が軽くなるように設計されています。
退職金の額面だけを見て安心していると、税金や社会保険料の控除後の手取り額がイメージと違うということも起こり得るため、仕組みを理解しておくことが重要です。
ここでは、退職所得控除の概要と、40年勤続看護師のモデルケースにおける手取り額のイメージ、退職金を一時金と年金形式で受け取る場合の違いなどについて解説します。
税制は改正されることがありますが、基本的な仕組みを押さえておくことで、自分の受給額をより現実的に把握しやすくなります。
退職所得控除のしくみと看護師のケース
退職金には退職所得控除という大きな控除があり、これにより多くの人が退職金に対する税負担を大きく抑えられています。
退職所得控除額は、勤続年数に応じて次のように計算されます。
勤続20年以下の部分:40万円 × 勤続年数(最低80万円)
勤続20年超の部分:70万円 ×(勤続年数 − 20年)
看護師として40年勤務した場合、退職所得控除額は
20年まで:40万円 × 20年 = 800万円
残り20年:70万円 × 20年 = 1,400万円
合計2,200万円となります。
退職金のうち、この2,200万円までは課税対象から差し引かれ、残りの金額のさらに半分に所得税がかかる仕組みです。
40年勤務での手取り額モデル(公立病院と民間病院)
公立病院で退職金2,200万円、民間病院で1,200万円を受け取るケースを例に、手取り額を概算してみます。
まず、公立病院で退職金2,200万円の場合、退職所得控除額2,200万円と同額のため、課税される退職所得はゼロとなり、所得税はかからない計算になります。住民税も同様に非課税です。
次に、民間病院で退職金1,200万円の場合、控除額2,200万円を下回るため、やはり退職所得はゼロとなり、所得税・住民税ともにかかりません。
実務上は、退職金が3,000万円を超えるようなケースで初めて、退職所得控除を超える部分への課税が意識されることが多いといえます。
このように、看護師の典型的な退職金水準では、税負担は非常に軽いか、実質的にゼロに近い場合が多いと考えられます。
一時金受け取りと年金受け取りの違い
勤務先によっては、退職金や企業年金を一時金としてまとめて受け取るか、年金形式で分割して受け取るかを選択できる場合があります。
一時金として受け取る場合は、先述の退職所得控除が適用され、優遇された税制のもとで大きな金額を手元に残せる点がメリットです。まとまった資金を住宅ローン返済や資産運用に充てたい人に適しています。
一方、年金形式で受け取る場合は、公的年金等控除が適用され、毎年の年金収入として課税されます。税負担は一時金と比べてやや重くなることもありますが、老後の定期的な収入源としての安心感が得られる点がメリットです。
看護師の場合、勤務先によって選択肢が限られることもあるため、自院の規程と税制の両方を踏まえたうえで受け取り方法を検討することが大切です。
老後資金として退職金だけで足りるのかを試算する
40年勤め上げて退職金を受け取れば、老後は安泰というイメージを持たれがちですが、実際には退職金だけで老後資金が十分とは言い切れません。
医療や介護の費用が増えやすい中高齢期において、どの程度の生活水準を維持したいのか、何歳まで働く可能性があるのかによって必要資金は大きく変わります。
ここでは、公的年金と退職金を合わせた標準的な老後資金のイメージを整理し、看護師のライフスタイルを踏まえた不足額の目安や、自助努力で準備しておきたい金額の考え方を解説します。
退職金はあくまでスタート地点であり、長期的な資産形成が欠かせないことを具体的にイメージできるようになります。
標準的な老後生活費と退職金の位置づけ
一般に、夫婦二人の老後の生活費は、月22万~28万円程度が一つの目安とされます。ゆとりある生活を望む場合は月30万円以上が必要になることもあり、年間では約260万~360万円の支出を想定することになります。
これに対し、公的年金の受給額は加入期間や収入によって異なりますが、看護師として長期間厚生年金に加入してきた場合、単身で月14万~18万円程度、夫婦世帯で合計月22万~26万円前後となるケースが一般的です。
この差額をどのように埋めるかが老後資金のテーマとなり、そこで大きな役割を果たすのが退職金です。
例えば、公立病院で2,000万円の退職金を受け取り、年金との不足分を毎年100万円取り崩すとすると、単純計算で約20年間カバーできることになります。
ただし、医療費・介護費や住まいの修繕費などの臨時支出も考えると、退職金のみで十分とは言い切れません。
公的年金と合わせた場合の不足額の目安
仮に、老後の生活費を月28万円、公的年金受給額を夫婦で月23万円とすると、毎月5万円、年間60万円の不足が生じます。
65歳から95歳まで30年間生きると仮定すれば、不足総額は約1,800万円です。退職金が2,000万円あれば一見足りるように見えますが、実際にはインフレや医療・介護費、住居費の変動を考えると、余裕があるとは言い切れません。
また、単身世帯や未婚の看護師では、年金受給額が相対的に少なくなる場合もあり、その分退職金や自助努力による金融資産の重要性が高まります。
40年勤続による退職金は大きな助けとなりますが、それに加えて現役時代から積み立てや投資などで老後資金を厚くしておくことが、中長期的な安心感につながります。
退職金以外で準備したい資産形成の考え方
退職金だけに頼らず老後資金を準備するためには、現役時代からの計画的な資産形成が欠かせません。
看護師は夜勤手当などで現役時代の収入が比較的高くなりやすい一方、消耗も大きいため、若いうちからの蓄財が後々の選択肢を広げます。具体的な方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- つみたてNISAなどを活用した長期分散投資
- 企業型や個人型確定拠出年金を用いた年金資産づくり
- 財形貯蓄や社内預金制度の活用
- 生活防衛資金と長期投資資金を分けて管理する家計設計
看護師として40年働くことを前提とするなら、20代から少額でも積み立てを開始し、退職金受給時にはそれなりの金融資産が形成されている状態を目指すことが、老後の安心につながります。
看護師が退職金を増やすために今からできること
退職金は勤務先の制度に大きく左右されるとはいえ、自分の行動次第で将来受け取る金額を増やすことも可能です。
既に就職している方も、これから就職・転職を考える看護師も、退職金を意識したキャリア設計を行うことで、老後の資金計画にゆとりが生まれます。
ここでは、勤務先選びのポイント、昇進や役職との関係、退職金規程のチェック方法、長期勤続に向けた健康管理や働き方の工夫など、今からできる具体的な対策を整理します。
退職金は単なる結果ではなく、長い年月をかけたキャリア選択と日々の積み重ねの集大成であることを、改めて確認していきましょう。
退職金規程が整っている職場を選ぶ重要性
退職金額を増やすための最も根本的な要素は、退職金制度そのものがしっかり整っている職場を選ぶことです。
同じ40年勤務でも、退職金制度が手厚い公立病院や大規模法人と、退職金のない小規模クリニックでは、生涯の最終的な受取額に数千万円の差がつくこともあります。
就職や転職の際には、求人票や面接だけではなく、可能であれば就業規則や退職金規程を確認し、次のようなポイントをチェックすることが重要です。
- 退職金制度の有無と適用条件(試用期間、勤続年数の下限など)
- 退職金の計算方法(最終基本給方式か、ポイント方式かなど)
- 定年退職と自己都合退職の支給率の違い
- 企業年金や確定拠出年金などの上乗せ制度の有無
これらを踏まえたうえで、月々の給与と退職金のバランスを総合的に評価することが望まれます。
昇進や役職が退職金に与える影響
多くの退職金制度は、退職時の基本給をベースに計算します。
したがって、師長や看護師長、看護部長などの役職に就いて基本給が上がれば、その分退職金も増えることになります。例えば、退職時の基本給が30万円か35万円かで、支給率が同じ35カ月分であれば、退職金は1,050万円と1,225万円でおよそ175万円の差になります。
昇進には責任や負担も伴いますが、長期的な報酬という観点では退職金に与える影響も無視できません。
自分がどの程度の役職までを目指すのか、家庭との両立や健康状態を考慮しつつ、キャリアパスを主体的に選択することが、結果的に退職金も含めた生涯賃金の最適化につながります。
長く働き続けるための健康管理と働き方
40年という長期間を看護師として勤務するためには、専門性だけでなく、心身の健康を維持することが欠かせません。
夜勤や交替制勤務による負担、感染症リスク、精神的ストレスなど、看護師ならではの課題にどう向き合うかが、長期勤続の鍵を握ります。退職金を増やすという観点からも、途中で離職せざるを得ない状況を避けるための健康管理は重要です。
- 睡眠と食事のリズムをできるだけ整える
- 定期的な健康診断と必要な検査を欠かさない
- メンタルヘルスの不調を早期に相談する
- ライフステージに応じて無理のない勤務形態を選ぶ
こうした取り組みにより、キャリアの中断や短期離職を防ぎ、結果として勤続年数と退職金の両方を守ることができます。
副業や投資とのバランスの取り方
近年、看護師の中でも副業や資産運用に関心を持つ方が増えています。
副業収入や投資による資産形成は老後の安心につながりますが、本業への支障や健康への負担が大きくなってしまっては本末転倒です。特に、過重労働による体調不良や燃え尽き症候群は、長期勤続と退職金に悪影響を及ぼす可能性があります。
副業を行う場合は、就業規則で許可されているかを確認し、本業に支障が出ない範囲の時間と内容にとどめることが大切です。
投資についても、短期的な利益を追うのではなく、長期・分散・積立を基本とした無理のないスタイルを心がけましょう。退職金を含めたトータルの資産計画を立て、その中の一部として副業や投資を位置づけるイメージが望ましいです。
まとめ
看護師 退職金 40年というテーマで見てきたように、40年近く看護師として働き続けた場合の退職金は、勤務先や役職によって大きく異なります。
公立病院や自治体病院では2,000万円前後、国立病院機構や大学病院では1,500万~2,200万円程度、民間病院では退職金制度の整備状況により1,000万前後から場合によってはゼロまで、幅広い水準が存在します。
退職金は、勤続年数、退職時の基本給、退職金規程という三つの要素で決まり、特に定年まで勤め上げるかどうか、役職に就くかどうかが大きな影響を及ぼします。
一方で、公的年金と組み合わせた老後資金を考えると、退職金だけで十分とは言えず、現役時代からの資産形成が欠かせません。勤務先選びやキャリアパス、健康管理、副業や投資のバランスなど、日々の選択が将来の安心を左右します。
この記事をきっかけに、自身の勤務先の退職金規程を確認し、将来受け取る退職金の大まかなイメージを把握してみてください。
そのうえで、退職金を軸としながらも、公的年金や自助努力による資産形成を組み合わせた現実的なライフプランを描くことが、看護師としての40年キャリアをより豊かなものにしていく一歩となるはずです。