褥瘡の早期発見と適切なステージ分類は、重症化を防ぎ、治療効果を高めるために看護師にとって欠かせません。圧迫による皮膚や組織の損傷は、ステージⅠからⅣ、さらに深部組織損傷や判定不能な状態(Unstageable)を含む六段階で定義されており、その見分け方には共通の判断基準があります。
本記事では、看護師としての視点から、「看護師 褥瘡 ステージ 見分け方」に即して、それぞれのステージの特徴と見分け方、観察すべきポイント、ケアの選択まで包括的に解説します。
目次
看護師 褥瘡 ステージ 見分け方:定義と国際基準
褥瘡をステージ分類する目的は、深達度によって皮膚・組織のどこまで損傷があるかを明らかにし、それに応じた予防・治療策を選択するためです。国際的には、NPIAP・EPUAP・PPPIAの共同ガイドラインでステージⅠ〜Ⅳの四つの基本ステージに加えて、深部組織損傷(Deep Tissue Injury=DTI)および判定不能(Unstageable)を含む六つのカテゴリーが用いられています。最新情報では日本でもこの六病期構成が褥瘡治療・予防ガイドラインに採用されています。
NPIAP/EPUAP分類の概要
この国際基準は皮膚と組織の損傷の深さを基準とします。ステージⅠは皮膚がまだ壊れていないが永続的な発赤があり、ステージⅡは真皮層までの部分的欠損。ステージⅢでは皮下脂肪が見える全層皮膚欠損、ステージⅣは筋肉・腱・骨まで露出する深い組織損傷です。DTIは表皮は残っていても深部組織が損傷している状態、Unstageableは壊死組織などで創の底が観察できない状態を指します。
日本のガイドラインにおける定義の対応
日本褥瘡学会の最新の創傷・褥瘡ガイドラインでも、NPIAP/EPUAPの六病期構成が正式に採用されており、日本語では「ステージI~IV」「深部組織圧迫性損傷」「判定不能」の病期として定義されています。実務では「ステージ」または「カテゴリ」と表記され、施設によって使い分けられることがあります。
ステージの表記と使い分けの注意点
ステージという言葉は順序的な進行を想起させるため、必ずしもⅠ→Ⅱ→Ⅲ→Ⅳと進行するわけではないことを理解する必要があります。ある褥瘡が最初にステージⅢで発見される場合もあります。治癒過程でもステージが単純にⅠへ戻るわけではなく、組織修復の過程で複雑な変化が生じることがあります。
各ステージの特徴と見分け方のポイント

ステージごとの見た目や深さ、観察すべき皮膚の状態や指での押圧・色調の変化などを具体的に理解することで、看護師は正確にステージを判断できます。この見分け方を知ることが悪化を防ぐケアに直結します。
ステージI(発赤が消えない皮膚の変化)
健全な皮膚に比べ、骨突出部などで発赤が持続し、指で押しても白くならない(非漂白性発赤)状態です。皮膚はまだ破れておらず、痛み・熱感・硬さ・浮腫などの所見が現れることがあります。色素沈着が濃い皮膚では発赤の見栄えが異なることがあるため、色調・感触の変化に注意が必要です。
ステージII(部分層皮膚欠損)
表皮または真皮の一部が損傷し、浅い潰瘍やびらん、水疱が形成されることがあります。創床は赤みを帯びたピンク色で、底が浅い開創性の創傷が主体です。スラフや壊死組織は存在せず、痛みや滲出液が見られることもありますが、脂肪・筋肉まで達していないことが特徴です。
ステージIII(全層皮膚欠損:皮下組織までの損傷)
表皮と真皮の完全な欠損が起こり、皮下脂肪層が見える状態です。瘡蓋や壊死組織が創床に存在することもあり、創の底部・周囲の皮膚との境界が不明瞭なことがあります。創の undermining(潰瘍の側面に沿っての剥離)やトンネル形成が起こることもありますが、骨・筋肉・腱などは露出しません。
ステージIV(深部組織までの重度の傷害)
ステージⅢよりさらに深く、**骨・腱・筋肉などが露出または触知できる**状態です。壊死組織やスラフが創床に見られることがあり、創の側面が undermining を起こしたり、トンネル形成が進むことがあります。骨・関節への波及があると骨髄炎などの合併症リスクが高まります。
深部組織損傷(Deep Tissue Injury:DTI)
DTI は表皮が intact または軽度損傷でも、下層の組織が深く傷害を受けている状態です。色は紫色・暗赤色・紫紺色などを呈し、血液や水ぶくれを伴うことがあります。触診で硬さ・浮腫感・温度差が認められることもあり、時間とともに急速に進行する可能性があります。ステージⅢまたはⅣへ移行することがあるため、早期発見と対応が重要です。
判定不能(Unstageable)
スラフやエスカーなどの壊死組織が創床を覆っていて、底の組織構造が観察できないため、ステージを正確に判定できない状態です。この状態では壊死部分を慎重に除去するなどして創床の底を露出させ、ステージⅢまたはⅣかを確認します。ただし、かかとの安定した乾燥したエスカーなど、自然の被覆となっているものは無理に除去しないことが勧められます。
看護師による観察・評価技術と判断のコツ

ステージを正確に見分けるには、視診・触診・色調・創床の情報など複数の要素を総合して評価する技術が必要です。早期発見を担う看護師として、日々の観察ポイントと記録の方法を身につけておくことが、褥瘡悪化を防ぐ第一歩です。
圧迫部位と発赤の観察
重点的に観察すべき部位は骨突出部で、寝ている姿勢・座っている状態で圧迫を受ける部分です。発赤が見られたらまず指圧法を行い、非漂白性の発赤かどうかを判断します。圧迫を除いた後も色が残る・白くならない場合はステージⅠの可能性が高く、看護記録に明確に残します。
色調・温度・硬さの変化
色の変化(紫・紫紺・暗赤など)、熱感・冷感・硬さ・軟らかさの変化は DT I を含む早期段階での重要な兆候です。特に色素が濃い皮膚では見た目の発赤が判別しづらいため、感触や温度の差、患者の自己申告も観察に含めます。
創床の内容と深さの確認
皮膚の欠損がある場合は創床の底の組織(脂肪・筋肉・骨)が見えるかどうか、スラフ・壊死組織が覆っていないかを確認します。創周囲の辺縁の状態、undermining やトンネルの有無も評価の材料とします。これらを記録し、ステージ判定に生かします。
患者の全身状態とリスク要因の把握
栄養状態、血流、体位変換能力、感覚障害、褥瘡発生の既往など全身的なリスクを評価することも重要です。たとえば低アルブミン血症や検査所見で感染の徴候がある場合、ステージⅢ以上への進行可能性が高まります。
ステージ別ケア戦略:悪化を防ぐための看護師アプローチ
各ステージに応じて適切なケアを行うことで褥瘡の進行を抑えることができ、治癒を促進できます。処置の選択、体位変換、サポートマットレスの使用、栄養管理など、看護師が主体的に関わる対策をステージ別に整理します。
ステージIでの予防中心ケア
発赤がある段階では、圧迫を除去するための頻回な体位変換や、圧を分散するサポート表面(マットレス・クッション)の使用が肝要です。皮膚の保湿を保ち、湿度・温度を管理することも重要です。また、患者や家族への教育も早期対応の鍵になります。
ステージIIにおける創傷管理と保湿ケア
浅い潰瘍や水疱などがある場合は、創辺縁の保護、適切な被覆材の使用、滲出液の管理を行います。創面を清潔に保ち、刺激を与えないようにすることが必要です。また、体内から治癒を促すための十分な栄養補給と水分管理を行います。
ステージIIIへの治療介入と壊死組織への対応
皮下脂肪が露出しているステージⅢでは、壊死組織の除去(デブリードマン)、感染の兆候の把握、適切な被覆材・ドレッシングを選択します。場合によっては外科的介入や真菌・細菌治療が必要になることもあります。患者への苦痛を最小限にするケアを心がけます。
ステージIVと合併症を伴うケースの対応
骨・筋肉などまで損傷が進んでいるステージⅣでは、侵襲的処置や複合治療が求められます。感染管理、外科的処置、圧力を逃がす装具・器材の導入、場合によっては入院・専門医と連携した治療が必要です。また、治癒のみならず患者の生活の質を維持するための疼痛管理や清潔維持も重要です。
DTIや Unstageable の早期対応と判断基準
DTI や判定不能な創は見た目だけで判断できないため、色調変化・壊死の程度など多様な情報をもとに慎重に評価します。壊死組織を適切に除去して創床を明らかにすること、創床の清浄化や圧力除去、感染予防を迅速に行うことが悪化防止につながります。
ケーススタディ:判断力を高める実例比較

実際の患者例を比較することで、ステージ分類やケアの選択がより明確になります。以下の表は、ステージごとの特徴と典型例、ケア方法を視覚的に整理しています。
| ステージ | 典型的な見た目の特徴 | 対応ケア・優先事項 |
| ステージI | 圧迫部位の赤み、非漂白性発赤、発熱や硬さあり | 体位変換・圧を軽減する支持面の使用・保湿・観察強化 |
| ステージII | 浅い潰瘍、水疱、創床は赤み、脂肪露出なし | 創の保護・清潔維持・適切な被覆材・栄養補給 |
| ステージIII | 皮下脂肪見える・創底浅い露呈・undermining/tunnelingあり | 壊死組織の除去・感染管理・圧力除去・専門的被覆材 |
| ステージIV | 骨や腱、筋肉の露出または触知可能、深い組織壊死あり | 外科的処置・感染制御・疼痛管理・入院検討 |
| DTI | 紫色・暗赤色・血液含む水疱・表皮は保たれているが感触温度異常あり | 早期報告・圧力除去・創傷管理・観察頻度増 |
| 判定不能 | 創底がスラフまたはエスカーで覆われ、深さ不明 | 被覆材除去・創床の確認・必要時専門家と連携 |
まとめ
「看護師 褥瘡 ステージ 見分け方」は、国際標準の六病期分類を理解し、それぞれのステージに応じた観察ポイントや判断方法を身につけることから始まります。ステージI~Ⅳ、DTI、Unstageable の特徴を見分けるためには視診・触診・創床の内容・患者個人のリスク因子を総合的に評価する必要があります。
早期発見のために毎日の皮膚観察を習慣化し、体位変換・圧力分散・栄養管理などの基本的ケアをステージに応じて強化しましょう。
看護師の判断力が褥瘡の悪化を防ぎ、患者の快適さと治癒のスピードに直結します。